とにかく走るのが楽しくてしょうがない!超節約生活でサーキット走行を楽しむ21才インプ乗りの目標とは?【取材地:福岡】[インプレッサ]

「小さい頃『カペタ』というモータースポーツのアニメにワクワクしよったんです」
レーシングカートとの出会いをきっかけに、試練や挫折を乗り越えながらF1ドライバーを目指して成長していく主人公の姿に憧れた少年は、月日を経た今、自らの愛車でサーキット走行に没頭している。

本格的にタイムアップを目指し始めると、最低限のチューニングやメンテナンス、エントリーフィーなどなど、それなりにお金がかかるのがサーキット走行。そのため就職して数年以内の金銭的な実入りが少ない若者にとっては、なかなか負担が大きい趣味といえる。

しかし、それでも「そこで目指すものがあるから」と、節約生活で費用を捻出しながらサーキットを走り続けているのが、今回ご紹介する福岡県北九州市在住の鶴島颯人(はやと)さん(21才)。

「中学生までは野球をしとったので、そこまでクルマに興味があったわけでもなかったんです。工業高校を出て自動車関連先に就職したんですけど、せっかくだからマニュアルに乗ろうかな〜というくらいで、最初はヴィッツRSに乗っていました。でも途中からマニュアル運転の楽しさに気づいてスポーツカーに乗りたくなりまして。5人乗りのターボ車ってことでインプレッサかランエボか悩んだんですけど、家族みんなで中古車屋さんへ行って見つけた“鷹目のインプレッサ”がめちゃくちゃカッコよくて一目惚れ。細かいスペックやグレードはあまり気にせずこれに決めました」

約1年半前の夏に、170万円でこのインプレッサを購入したという鶴島さん。当時はまだ19才で購入資金も貯まっていなかったため、親に立て替えてもらいコツコツ返す道を選んだそうだ。こうして普段から節約を心がけながらの愛車ライフがスタートする。

鶴島さんが購入したのは2005年式のスバル・インプレッサ WRX STI スペックCの特別限定モデル。フルタイム4WDでカタログ値280ps、軽量ボディにスポーティな装備が充実していて、素のままでも十分ポテンシャルが高く走って楽しいクルマである。
ちなみに鷹の目だけでなく、インプレッサの王道であるボディカラーも購入の決め手のひとつだったという。

おなじくインプレッサを買って乗っていた高校の友だちといっしょに遊びに出かけたり、その友人の誘いでミーティングに行ってみたりと、新たな愛車ライフを歩み始めた鶴島さん。
「最初は通勤で使っていたので毎日それなりの距離を乗っていたんですけど、その後会社の寮に住むようになってから、エンジンの調子が悪くなったんです。短距離走行は熱がこもるからあまり良くないと聞いたことと、ガソリン代もかかるしオイルも汚れるかもと思ったので、それからは極力通勤では乗らないようにして、週末実家に行く時に乗るのと街乗りが主になりました」

しかしそこはやはり走って楽しいスポーツカー。やがて鶴島さんはそれだけでは満足できなくなる。
「せっかくスポーツカーを買ったんだから1回はサーキットを走ろう、って思ったんです。ほら、スポーツカーは速い、速いといえばサーキットだ!って(笑)。実は父親も昔バイクでレースに出ていてスポーツカーにも詳しいので、相談していて興味が出たこともありましたね。ヴィッツに乗っていた時も一度だけ体験走行はしたことがありました。で、実際走ったらめちゃくちゃおもしろかったんですよ」
ミーティングなどに参加した時には感じなかった「これだ!」という感覚があり『自分がやりたかったのはこれだ』と確信したという。

こうしてサーキット走行でのタイムアップの楽しみに目覚めた鶴島さんは、インターネットで見つけたドライバーズカフェ・フォレストでアドバイスを受けるようになる。
「インプレッサは、僕にとって街乗りよりサーキットで速く走るための大事な武器に変わりました。今は自分自身には極力お金をかけず、クルマのメンテナンスにしっかり費やすように心がけとりますね。洗車も週に1回下回りまでしっかりやります。とにかく休みの日もクルマ中心で動いてお金がないので、お昼も実家に帰って食べるようにしているんです。『音がうるさいな』って言われているので、マフラーや吸排気系のパーツを購入するためにの費用を貯めているところです。ちなみに、インプレッサ購入の立て替え費用は半分まで減りました」

街乗り用のタイヤは前オーナーさんが履いていたタイヤを使用しているというほど、余分なお金を使わない徹底した節約生活を送る鶴島さん。
サーキット走行に必要なヘルメットは量販店で買い揃え、グローブは今のところバッティンググローブを使用している。

もちろん難燃性で安全性の高い競技専用品が理想的なのは間違いないけれど、走行会に参加するための最低限の装備を「お金がないけど出来る範囲でなんとかしよう」という彼なりの工夫といえるだろう。
「もともと野球やってましたから。バッティンググローブって皮が何種類かあるんですけど、これがまたフィットするし結構ハンドルさばきも楽なんです」

そんな鶴島さんが目指している愛車のコンセプトは“外見ノーマルだけど走ったら追いつけない”という性能重視のスタイル。
このスペックCはもともとハイスペックでサーキット初心者である彼が走る分にはじゅうぶん速く、前オーナーによってテイン製車高調への交換などライトチューンも施されていた。

「今のところクルマを買ってから自分で買ってつけたのは水温メーターと4点式のシートベルトだけです。次のボーナスが入ったらフルバケットシートを入れたいですね。あとは牽引フックを毎回つけたりはずしたりしているので、折りたたみ式のものが手に入ればいいなと思っています」と、あくまでもサーキットを走る上で最小限必要なものが中心。
今の時点で必ずしも必要でないハイスペック装備には無理して手を出さないのも彼の方針なのだ。

「現状のままでもまだまだ速く走れる余地は残っていると思うので、このままウデを磨くつもりです。それでもタイムが上がらないと思ったら足回りをいじって、そのあとは吸排気をいじってパワーを上げて、その後は補強パーツをつけて…とお財布とも相談しながら段階的に仕上げていこうと考えてます。あと、サーキットではGTウイングをつけるのも憧れです!」
実際、今はまだ怖くてアクセルを踏み切れていない部分があるなど、クルマの持つポテンシャルを使い切れていないという。

そんな鶴島さんが走行タイムを上げていくうえで、とても頼りにしているのが、バイクレース経験があり、現在も86を所有しているという父親だ。
「父親には今でも走りにいく前に注意点を聞いたりしています。それにカートにはよく一緒に行ったりするんですけど、僕の方がタイムはちょっとだけ速いけど、父親の方がタイムの波がなくて安定しているんです。そういうところがすごいなって。あと、レース特有のクルマ対クルマの抜き差しがあるじゃないですか。今度一緒に走るときはあれを父親に教わりながらカートで練習したいと思ってます。追い抜き方のコースラインが全然わからないし、知り合いじゃない人ばかりだとできないので父親がいてくれたらとてもありがたいんですよね。」
彼がタイムアップやレースでの結果を目指す上で、父親のサポートが誰よりも信頼し力強い味方なのは間違いない。

ちなみに、冒頭に出てきたアニメ『カペタ』の主人公がレーシングカートにハマるきっかけを作ったのも父親だったことを考えると、鶴島さんとオーバーラップする部分が多いような気も!?

そして鶴島さんは今後のビジョンについても具体的に語ってくれた。
「サーキットで速く走れるようになりたいのが今の1番の目標です。父親を見ていると結婚したら無理だろうなと思うし、いつできなくなるかもわからないから、できるときにやっておきたいと思ってます。それと、これはまだしばらく先の話になりますが、父親の86を譲ってもらって、ライセンスを取ってレースに出てみたいんです」

金銭的に余裕のない若者にとって、愛車での本格的なサーキット活動は負担も多いけれど、それ以上に夢や目標を持てる貴重な場であることは、鶴島さんを見ているとよくわかる。
鶴島さんのように、自分が出来る範囲で無理をせず愛車と共に少しずつ着実にレベルアップしていく楽しみ方をする人がもっと増えてもいいのではと思うと同時に、いつかレーサーとして成長した彼に偶然サーキットで出会う日がやってくるかも? という妄想を思い浮かべてワクワクするのでした。

(⽂: ⻄本尚恵 / 撮影: 平野 陽)

[ガズー編集部]

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