レクサスUX vs BMW X2 比較試乗レポート(その3)

レクサス初のコンパクトクロスオーバーモデルUXと、BMWのスポーツアクティビティクーペX2に試乗。スペックだけではわからない、それぞれの特徴について報告する。

クロスオーバー VS スポーツアクティビティクーペ

コンパクトSUVの人気が高まる中、レクサスがハッチバックとSUVのクロスオーバーとして投入したニューモデルがUXだ。扱いやすいサイズのボディであるにもかかわらず、高めの車高を確保し、フェンダーアーチモールをボディと別色にすることで、力強さや存在感を高めているのはまさにSUV(スポーツユーティリティビークル)の手法。その一方で、自らを“都会派コンパクトクロスオーバー”と呼び、SUVとは違う世界に存在することをこのUXはアピールする。

テレーンカーキマイカメタリックと名付けられた写真のボディカラーは、レクサスUXで初採用された新色。ほか12色が選べる。
テレーンカーキマイカメタリックと名付けられた写真のボディカラーは、レクサスUXで初採用された新色。ほか12色が選べる。

オンロード性能を前面に押し出し、成功をおさめてきたといえば、真っ先に思い浮かぶのがBMWのXモデルだ。スポーツアクティビティビークル(SAV)を名乗るX5を皮切りにスタートしたXモデルは、その後、クーペスタイルが魅力のスポーツアクティビティクーペ(SAC)を追加し、いまやBMWのセールス全体の3分の1を占める重要なモデルとなった。そんなXモデルの中で、ある意味SUV色が一番薄いのが、最もコンパクトなSACとして登場した「X2」だろう。そこで、UXとX2を乗り比べて、都会派コンパクトSUVの魅力を探ることにした。

比較したのはUX250h“version L”とX2 xDrive20i M Sport X。UXは2リットルのハイブリッドシステムを搭載するグレードで、本革シートなど装備が充実した“version L”を選択。一方、X2は、エクストリームスポーツにインスピレーションを受けたという2リットルターボモデル、M Sport Xを選んだ。都会派をうたうだけに、UX、X2ともにAWD車だけでなく2WD車(FF車)も用意されるが、今回ピックアップしたのはともにAWD車である。

2台のボディサイズは若干UXのほうが大きいものの、その差はほとんどないといっていい。いずれもSUVタイプのモデルとしては背が低く、個性豊かなスタイリングが与えられている。
2台のボディサイズは若干UXのほうが大きいものの、その差はほとんどないといっていい。いずれもSUVタイプのモデルとしては背が低く、個性豊かなスタイリングが与えられている。

都会派らしい新たなスタイル

まずはエクステリアからチェックするとしよう。UXのボディサイズは、全長×全幅×全高=4495×1840×1540mmとSUVとしてはコンパクトな部類だが、単独で見るとサイズ以上の存在感がある。

中でも、大きなスピンドルグリルとそそり立つようなフロントバンパー、キレのあるヘッドライトが作り出すフロントマスクからは、UXのコンパクトな寸法が想像できない。くっきりとかたどられたフェンダーアーチもその印象を強めている。さらに、テールゲートに配されたフィン形状のエアロスタビライジングブレードライトがUXのリヤビューに個性を与えているのも見逃せない。

エッジの効いたデザインをまとうレクサスUX。後方に向かって切れ上がるホイールハウスやキャラクターラインで躍動感が演出される。
エッジの効いたデザインをまとうレクサスUX。後方に向かって切れ上がるホイールハウスやキャラクターラインで躍動感が演出される。

全長×全幅×全高=4375×1825×1535mmと、数値の上ではUXよりもコンパクトなX2だが、存在感の強さでは負けていない。ガルバニック・ゴールドという派手なボディカラーの影響もあるが、キドニーグリルの下に目立つようレイアウトされたエアインテークが、フロントマスクに力強さを与えているからだ。塊感のあるボディに組み合わされる“フローズン・グレー”のモールや、オプション装備の20インチホイールも効いている。

そんな個性派の2台だが、駐車場などで他のクルマと並ぶと、あらためて全高の低さが目立つ。ともに1550mmを切る全高のおかげで、高さ制限のある機械式駐車場でも、断られる心配がないのがうれしいところだ。

静止時でも躍動感の伝わるスタイリングを特徴とするX2。試乗車は、ガルバニック・ゴールドと呼ばれる鮮やかなボディカラーをまとっていた。
静止時でも躍動感の伝わるスタイリングを特徴とするX2。試乗車は、ガルバニック・ゴールドと呼ばれる鮮やかなボディカラーをまとっていた。

スタイリッシュなUXには弱点も

UX、X2ともに、ドライバー中心のコックピットデザインを採用するが、その印象は明らかに異なる。UXは、X2よりも着座位置が低く、SUVとしては包み込まれている感じが強い。しかも、アイポイントも低めとあって、SUVタイプのクルマに乗っているという感じがあまりしないのだ。インストルメントパネルの上部は和紙を模したという素材でカバーされ、なかなかスタイリッシュ。電動調節式のステアリングコラムも備わり、上級モデルからの乗り換えでも不満のない内容に仕上がっている。

  • UXのコックピットでは、適度な包まれ感が得られる。一方で、前方への抜けのよさや水平方向の見晴らしのよさにも配慮されている。
    UXのコックピットでは、適度な包まれ感が得られる。一方で、前方への抜けのよさや水平方向の見晴らしのよさにも配慮されている。
  • 今回試乗したUX250h“version L”のフロントシート。背もたれは、コンソールやアームレストのラインに合わせた2分割のデザインになっている。
    今回試乗したUX250h“version L”のフロントシート。背もたれは、コンソールやアームレストのラインに合わせた2分割のデザインになっている。

“ドライバーオリエンテッド”なコックピットといえばBMWの十八番だが、アイポイントがUXよりも高いこともあって、X2のほうがむしろ開放的に思えるほどだ。幾何学模様のデコラティブパネルが若々しくスポーティな印象をもたらす一方、ダッシュボードにステッチ付きの素材を施すことで上質さを高めているのは、なかなかうまい演出といえる。

  • X2 xDrive20i M Sport Xのシート。アルカンターラとマイクロ・ヘキサゴン・クロスで仕立てられている。
    X2 xDrive20i M Sport Xのシート。アルカンターラとマイクロ・ヘキサゴン・クロスで仕立てられている。
  • インストルメントパネルをはじめとするX2のインテリアは、ドライバーを中心にデザインされている。
    インストルメントパネルをはじめとするX2のインテリアは、ドライバーを中心にデザインされている。

意外だったのは室内スペース。UXは全長が4495mm、対するX2は4375mmでX2のほうが120mm短い。後席は、ともに大人が座っても十分なスペースが確保されているが、ニールームはX2のほうが明らかに余裕があり、楽に座れるのだ。

  • UXのリヤシート。前後のカップルディスタンスは、大人が乗車しても十分広く感じられる870mmが確保されている。
    UXのリヤシート。前後のカップルディスタンスは、大人が乗車しても十分広く感じられる870mmが確保されている。
  • クーペライクなルックスから想像する以上に、X2の頭上空間やニールームは広々としている。
    クーペライクなルックスから想像する以上に、X2の頭上空間やニールームは広々としている。

ラゲージスペースも、UXが5人乗車時で220リットルとかなり狭いのに対し、X2は470リットルと倍以上の広さを確保している。スタイリッシュにまとめられたUXの弱点はここにあった。

  • UXのラゲージスペースの容量は5人乗車時で220リットル。薄型のトノカバーは柔軟性があり、小さく折りたたんでフロア下に収納できる。
    UXのラゲージスペースの容量は5人乗車時で220リットル。薄型のトノカバーは柔軟性があり、小さく折りたたんでフロア下に収納できる。
  • X2のラゲージスペース。5人乗車時の容量は470リットルで、3分割式のリヤシートを倒せば3倍近くにまで拡大可能。
    X2のラゲージスペース。5人乗車時の容量は470リットルで、3分割式のリヤシートを倒せば3倍近くにまで拡大可能。

BMWらしさが伝わるX2

では、気になる走りはどうか? 2リットルエンジンを組み合わせたハイブリッドシステムを搭載するUXは、力強くスムーズな加速が魅力だ。モーターで発進するUXは出足から力強く、走りだしてからも全域でトルクの豊かさが体感できる。アクセルペダルを大きく踏み込んで加速する場面では、エンジンの回転の高まりとスピードの伸びにズレがなく、CVTのような違和感が抑えられているのがいい。

  • システム最高出力184PSを発生する、レクサスUX250h。その走りは全域における力強さが印象的だ。
    システム最高出力184PSを発生する、レクサスUX250h。その走りは全域における力強さが印象的だ。
  • 新開発の2リットル直4自然吸気エンジンにモーターが組み合わされた、UXのハイブリッドユニット。
    新開発の2リットル直4自然吸気エンジンにモーターが組み合わされた、UXのハイブリッドユニット。

一方、最高出力192PSを発生する2リットル直列4気筒ガソリンターボエンジンに8速オートマチックを組み合わせたX2も、低回転からトルク十分でレスポンスも良い。さらに急加速が必要な場面では、6000r.p.m.あたりまで力強い加速が続く特性により、ストレスのないドライブが楽しめる。

ともにSUVとしては低い全高のおかげで、運転感覚はセダンやハッチバックとほとんど変わらない。UXは見た目以上に軽快なハンドリングを示し、スタビリティも上々。一方、X2は20インチタイヤが路面からショックを拾いがちなのが玉にキズだが、M Sport X用のスポーツサスペンションと相まって、BMWらしい機敏な動きを見せる。SUVであってもBMWが掲げる「駆けぬける歓び」は忘れてはいないのだ。

  • 低回転域から280N・mの最大トルクを発生するX2 xDrive20i M Sport X。ストレスのないピックアップを見せる。
    低回転域から280N・mの最大トルクを発生するX2 xDrive20i M Sport X。ストレスのないピックアップを見せる。
  • X2 xDrive20i M Sport Xの2リットル直4ターボエンジン。X2シリーズにはこのほか、1.5リットルモデルも存在する。
    X2 xDrive20i M Sport Xの2リットル直4ターボエンジン。X2シリーズにはこのほか、1.5リットルモデルも存在する。

このように、キャラクターに違いのある2台だけに、好みは分かれそうだ。SUVの魅力とともに上質さを重視する人にはUXが似合うし、スポーティさを最重視するならX2がおすすめ。いずれにせよ、ともに都市型ライフスタイルの中で付き合うにはうってつけのモデルといえる。

(text:生方 聡/photo:田村 弥)

[ガズー編集部]

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