新しい所有の形“愛車サブスク”のトヨタ KINTO。クルマを乗り換えて「やりたいこと」に出会う―モビリティを取り巻くサービスの展望②

コネクティッドや自動運転で大きな変革期を迎えている自動車産業。さらなる飛躍に向けてさまざまな業界との協業が進むなか、新しいサービスや取り組みを実現するため、信念と情熱を持ち、困難に対峙する人たちがいる。この連載では、そんな「未来を創る仕事」に携わる人たちの姿に迫っていく。

毎月決まった料金を支払うことで、音楽が聴き放題になったり、映画や雑誌が見放題になったりする。
すでに音楽配信や動画配信、電子書籍配信でおなじみになっているこの仕組みは、英語で定期購読を意味する「サブスクリプション」というサービスだ。
焼肉チェーン店が「焼肉サブスク」を実施して話題になったのも記憶に新しいところ。

このサブスク、一般的にはソフトウェアや音楽ファイルなど電子データで行なわれることが多いのだが、トヨタの「KINTO(キント)」は、これをクルマの世界に持ち込んだものだ。
新しいマイカー所有の形といえるクルマのサブスクを実現するに当たって、トヨタはどんな取り組みをしてきたのだろうか。

そこで、KINTOのサービスを運営する株式会社KINTO 企画部兼マーケティング部 主幹の曽根原由梨氏に、KINTOが掲げる「愛車サブスク」の現在と未来について伺った。

KINTOが目指したのは「ストレスフリー」

株式会社KINTO 企画部兼マーケティング部 主幹の曽根原由梨氏。KINTOは「今までにない移動の喜びを創造する会社。時代の少し先を行くサービスの提供を目指しており、今はそのサービスが『愛車サブスクリプション』にあたる」という
株式会社KINTO 企画部兼マーケティング部 主幹の曽根原由梨氏。KINTOは「今までにない移動の喜びを創造する会社。時代の少し先を行くサービスの提供を目指しており、今はそのサービスが『愛車サブスクリプション』にあたる」という

KINTOは、毎月定額を支払うことで3年のあいだ「好みの新車に乗る」ことができるサービスだ。

月額料金には車両本体のほか税金や登録時の諸費用、任意保険、正規販売店でのメンテナンス費、サポート費が含まれているので、ユーザーが追加で用意するのは駐車場代とガソリン代だけ。頭金も不要だ。

トヨタブランドとレクサスブランド31車種の中から好きな1台を3年間乗り続けることができる「KINTO ONE」と、レクサス6車種の中から3年間で半年ごとに6台、もしくは1年ごとに3台に乗り換えられる「KINTO FLEX」(旧称 KINTO SELECT)の2つのプランがある。

KINTO ONEの契約は販売店のほか、KINTOのWebサイト上だけでも完結するところが大きな特徴で、納車以外来店は不要。こうした契約方法は、インターネットに親しんでいる世代から評価されていて、実際20代~30代の若い世代の契約者も多い。

曽根原氏は、「クルマを使う方々のストレスを減らし、カーライフを楽しんでいただきたい」という想いがKINTO ONEを始めたきっかけになっているという。

保険にお金を払いながら万が一のとき、いざ保険適用しようとすると等級が下がってしまうので適用するか悩んだり、毎年の自動車税の支払いの煩わしさ、値引き交渉などに面倒や負担を感じたりしてしまうもの。
ましてクルマを初めて買うとなると、どのグレードにするか、オプションで何を選べばよいのか、点検パックや延長保証は入った方がよいのかなど、単純な金銭負担のほかに、決めるべきことが多くて悩んでしまうかもしれない。

これはクルマ選びの楽しい部分でもあるが、クルマに詳しくない人でもストレスなく満足度の高い1台を選べるように、KINTOでは人気のグレードと定番オプションが選択式のパッケージになっている。
クルマを初めて買う人でも「おすすめ」アイコンに従っていけば間違いないチョイスができるうえ、踏み間違い防止や自動ブレーキといった安全装備の有無が分かりやすいので、悩む場面も少なくなるだろう。

曽根原氏によるとWebサイトは頻繁に改修を行なっているそうで、「売れているオプション、グレードが揃っていて、クルマを選択するだけで必要な保険が付いてきます。クルマ選び以外のことをすべて用意して、煩わしさを感じないようにしています。また、お客さまが知りたい・やりたいと思うことが簡単に実現できるサイトを目指して日々改善しています」と説明する。
こうした取り組みの成果で、若年層の取り込みもできているという。

当初、レクサスをWebで注文する人がどれだけいるかという疑問の声が出たそうだが、実際にはレクサスを選んだ人の70%がWebからのオーダーだったという。また、若い世代ほどWebからの申し込みが多い
当初、レクサスをWebで注文する人がどれだけいるかという疑問の声が出たそうだが、実際にはレクサスを選んだ人の70%がWebからのオーダーだったという。また、若い世代ほどWebからの申し込みが多い

結婚、転勤、免許返納など身の回りの変化に対応しやすい

KINTOの契約期間は3年間で、満了後は返却して終了するか、新たな車両を契約するかを選ぶことができるため、就職や結婚、出産、転勤などライフステージの変化に沿ったカーライフを楽しめる。
残価設定型クレジット(残クレ)に似たイメージを持つかもしれないが、決定的に異なるのは「そのまま乗り続ける」という選択肢がない点だ。

また、中途解約の場合は解約金が発生するが、海外転勤や免許返納時は中途解約金が不要となっており、急な環境の変化にも対応しやすい。

最近のクルマは安全装備や運転支援技術の進化が早いので、その点でも3年ごとに最新モデルに乗り換えられることは魅力的に映る。
曽根原氏は「私たちの世代から高齢になった親へクルマを勧めるときも、KINTOなら最新の安全装備をムリなく選べます」と太鼓判を押す。免許返納時の解約のしやすさもあって、親にKINTOを勧める子供世代は多いという。

利用しても掛け金が変わらないKINTOの任意保険に驚き!

任意保険は万一のことを考えると入らないという選択肢はないが、初めて加入する場合や年齢が若いと保険料は高くなるので、これがクルマを持つことを諦める要因の1つになっている。

その点、任意保険を月額料金に含むKINTOは、年齢や契約年数に関係なく「保険料が一律」という画期的な設定になっていた。もちろん、対人・対物無制限保障で、ケガは5000万円まで保障。弁護士特約やロードサービスも付帯する。
具体的な金額は車種によって変わるので省くが、若い世代で保険料の負担が減るのは間違いなく、お得感が強い。

また通常、任意保険は利用すると翌年の掛け金が上がるものだが、KINTOにはそれがない。そのため、例えばクルマをぶつけて車両保険を利用するときも、免責の5万円を払うのみで、翌年の月額料金に変化はない。

利用回数の設定もないので、年に数回保険を使うことになったとしてもユーザーの負担は変わらないのだ。

車両保険できれいに直してあれば、契約満了時の返却条件にある「原状回復」は問題なくクリアできる。この仕組みには、「最適なクルマを最適なタイミングで必要な方に使っていただけるように、新車の次は中古車での流通など、1台のクルマの稼働率を上げたい」というKINTO側の想いもあるという。

あるユーザーからは「保険の内容がかなり充実しているので、子供にはKINTOを勧めたい」と言われたこともあるという。クルマに詳しい人から見てもKINTOの保険設定は魅力だ
あるユーザーからは「保険の内容がかなり充実しているので、子供にはKINTOを勧めたい」と言われたこともあるという。クルマに詳しい人から見てもKINTOの保険設定は魅力だ

ポイント付与は「ていねいに乗ってくれる人への感謝の気持ち」

KINTOには、特定の車種、装備を対象にした「愛車ポイントサービス」がある。
これは定期点検で販売店に入庫した際に付与されるのに加えて、トヨタが提供する「My TOYOTA for T-Connect」内にある「ドライブ診断」サービスで、エコや安全を重視した運転をした際もポイントが付く。

そのポイントはKINTOが設定する「グッズ」「グルメ」「体験ギフト」というさまざまなカタログギフトと、1ポイント=1円相当で交換できる。なお、運転スコアは年間で最大1万2000ポイント、整備に出すだけで年間最大1000ポイントが貯まるようになっている。

エコな運転や定期メンテナンスでポイントが貯まる
エコな運転や定期メンテナンスでポイントが貯まる

「クルマに乗ってポイントが貯まる」という仕組みだけを聞くと、なぜそんなサービスを用意したのか不思議に思うかもしれない。

KINTOの車両は、3年経過して契約が終わると、最初のオーナーの手を離れて中古車市場で流通する。そのとき、クルマがていねいに乗られていて、きれいな状態なら、またきっと大事にされるはず。

エコ運転や安全運転でポイントが付与されるのは、「ていねいに乗ってくれる人への感謝の気持ち」だという。
3年で手放すことが分かっていても、そのあいだ愛車を大事にしてほしい。次のオーナーにもかわいがってほしい。曽根原氏の言葉からは、そんな気持ちが込められているように感じられた。

ポイントサービスは「ていねいに乗ってくれる人への感謝の気持ち」
ポイントサービスは「ていねいに乗ってくれる人への感謝の気持ち」

クルマを大切にすれば、ポイントが貯まって、毎日が楽しくなる。クルマのある生活が、暮らしを豊かにするきっかけになる。

そのきっかけの例が、曽根原氏の話のなかにあった。ユーザーから寄せられた意見の中に、「クルマをプリウスからヴォクシーに変えたらキャンプに行くようになった」というコメントを見つけたことがあるという。

また、KINTOのWebサイトではランドクルーザーやレクサスのクリック率が高いそうで、「“乗ってみたい”の表われ」と分析している。

クルマは生活を支える移動手段であると同時に、オーナーのプライベートを受け止めてくれる趣味空間でもある。曽根原氏は「これからKINTO ONEのお客さまに、もっと楽しく新しい体験ができるサービスを付加して、クルマという空間を楽しい思い出で満たしていきたい。それが愛車サブスクリプションの目指す姿」と語る。

KINTOを通じて次々に新しいクルマと出会うことで、ユーザーの暮らしをも変えていく。KINTOが掲げる「愛車のサブスク」は、そんな未来を目指しているのではないだろうか。

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road