欧米のコネクティッドサービスは? 官民で対応が進む欧州、意外な出遅れのIT大国アメリカークルマのトレンドワード⑧

自動で走ったり、電気で動いたり、インターネットにつながったりと、クルマを取り巻くトレンドは今、めまぐるしく変化を続けている。この連載では、なんとなく分かった気になってしまいがちな最新キーワードを整理して、現在進行形のクルマのトレンドに迫っていく。
第7回ではメルセデス・ベンツとBMWのコネクティッドサービスに触れたが、ここではそのほかの欧米メーカーのトレンドをかいつまんで紹介しよう。

「Audi SOSコール」などを備えた「Audi Connect」
「Audi SOSコール」などを備えた「Audi Connect」

EUでは2018年4月1日から車両緊急通報システム「eCall」の全車標準装備化を、新車を対象に義務付けている。
クルマが事故にあった際に、エアバッグの動作状況や位置情報などを自動で通報し、事故発生からドライバーの救助までの時間短縮を図るものだ。欧州勢はコネクティッド領域で官民含めて先行している印象がある。

巨大アライアンスの強みを活かすVWグループ

それでは欧州勢からは、アウディ、ポルシェ、ランボルギーニなどが名を連ねる世界最大級のアライアンス「VW(フォルクス・ワーゲン)グループ」を例に見ていこう。

アウディは2014年から車載OSをAndroidプラットフォームで展開することを目指す「OAA(オープン・オートモーティブ・アライアンス)」に参加。
GM(ゼネラルモーターズ)、ヒュンダイ(現代自動車)、ホンダと、Androidを提供するGoogle、半導体メーカーのNVIDIAら6社で始まったOAAは、わずか半年で35社にまで増え、その後も提携の輪は広がっている。

アウディのコネクティッドサービスは「Audi connect」。
渋滞情報、天気、ガソリンスタンド情報、ニュースなどの情報が得られ、スマホアプリとの連携サービス「myCarManager」では、ナビ設定や駐車場ファインダーなど、前項までの他メーカーでも紹介してきたような押さえるべき機能はすべて装備。

緊急時に手動でも自動でも通報できる「Audi SOSコール」、クルマに問題があった場合の「Audi オンラインロードサイドアシスタンス」、24時間有人対応のコンシェルジュサービス「Audi connect Navigator」などの安心・安全機能も標準で備えている。

スマホやタブレットなどを接続できる「Wi-Fiホットスポット」機能を備えているのも欧州メーカーの特徴の一つだ。

開発にあたっては無駄な重複を避けるため、アウディが自動運転領域、VWは自動駐車領域といったように、グループの強みを活かして効率的な技術開発を進めている。
成果として、ドライバー監視下での自動運転「レベル3」に相当する「アウディAIトラフィックジャムパイロット」が実用化段階にあることをアピールできた。
現在はまだ各国の法整備待ちだが、その認可第1号筆頭にあるのが「Audi A8」だと業界内では認識されている。

「Audi A8」
「Audi A8」

VWグループからもう1社、「911」に代表される類い希なるハードウェアで濃厚なファンを牽引してきたポルシェ。
ポルシェは、デジタル関連サービスの売上を将来的には全体の10%まで成長させることを目標にしている。

「ヘイ、ポルシェ」と呼びかけると起動する「Porsche Connect」も、カーナビ設定、スマホ連携など、これまで紹介してきた基本機能を備えている。
また、タイカンではApple IDとPorsche IDの両方があればスマホなしでも音楽が聴けるのはおもしろい機能。

将来的にはモビリティインフラやサービスへと発展させていきたい構えのポルシェ。ハードウェアのデザイン能力と、デジタル開発をどうエンゲージさせてくれるのか楽しみだ。

ポルシェ「マカン」のインテリア
ポルシェ「マカン」のインテリア

先進のテスラ。乗り遅れたFCAはGoogleを頼る

米国勢を見ていこう。フォードでは、リンカーンブランドで全モデルのコネクティッド化完了に向け動いている。

毛色の変わったところではAmazonと連携した「Amazon Key」(日本は未提供)のクルマ版機能がある。
注文した荷物を、マンションの宅配ボックスのようにクルマのトランクを使い受け取るというものだ。フォード車では、このサービスにも順次対応していくという。

コネクティッドサービスに対し米国勢は全般的に出遅れている印象だが、そのなかで新興勢力のテスラが存在感を見せている。
テスラは、車載OSのなかでも重要なADAS(先進安全運転支援システム)関連のソフトを、オンラインでのアップデートを可能にした。
既存メーカーではセキュリティの面から踏み込めなかった領域だが、EV開拓者テスラらしい設計だ。

テスラ モデル 3のインテリア
テスラ モデル 3のインテリア

今のコネクティッドサービスは「センターとクルマ」のつながりだが、「モデルS」では将来を見越した「車車間通信」を使うことができるよう車両側の通信プラットフォームが実装済みになっているなど拡張性を備えており、大画面を活かした「Teslaシアター」は各種ストリーミングサービスも楽しめて、エンタメ面も充実している。

フォードやテスラのように自社で開発リソースを割けないメーカーは、外部委託の道を選んでいる。FCA(フィアット・クライスラー・オートモーティブ)はコネクティッドにまつわるシステム開発の一式をGoogle、サムスンへ委託することを決めている。
すでにレンタカー大手エイビスグループとの間で、計2万台のFCAブランドのレンタカーが、コネクティッド機能を有すると発表している。

予約手続き、施錠・解錠、返却手続きなどすべてをスマホで完結できるもので、同時に大量のビッグデータも収集できる。
フィアット、クライスラー、ジープ、アルファロメオ、アバルトなど、各ブランド各モデルがどのようなユーザーに、どのように利用されているか、そのデータはブランディング強化・車両開発に活かされていくだろう。

ここまではクルマメーカーのコネクティッドサービスを紹介してきたが、次回はカーナビやドラレコなど後付けでコネクティッドを実現するサードパーティ企業の取り組みを紹介する。

[ガズー編集部]

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