「思いっきり走ることが最高の幸せ!」そんなGRオーナー夫婦の物語

  • GAZOO愛車取材会の会場であり石川県政記念 しいのき迎賓館で取材したGR86 SZ(ZN8)とGRヤリス RC(GXPA16)

    GR86 SZ(ZN8)とGRヤリス RC(GXPA16)

トヨタ・GR86 SZ(ZN8)に乗るsayaさんと、GRヤリス RC(GXPA16)に乗るDaiさんご夫婦のカーライフは、常に『スポーツ走行』が軸であり、主役になっているという。
例えば2023年の9月は地元の北陸だけでなく関東エリアにも遠征するなど毎週どこかの走行会に参加していたし、2024年シーズンはGR86で『G6ジムカーナシリーズ』にダブルエントリーで参戦を予定していて、これから忙しくなると目をキラキラさせていた。
「私たち夫婦にとって”走る”ということはライフスタイルの一部なんです」と、sayaさんがニコニコしながら話してくれるその隣で、Daiさんが頷く。

奥様のsayaさんがクルマ好きになったのは大学2年生の時。バンド活動でギタリストをしていたため、機材を積むのにクルマが欲しいというのが事の始まりだった。中古車店に足を運ぶと、そこに置いてあったトヨタ・スプリンタートレノGT APEX(AE101)にひと目惚れし、即購入を決めたそうだ。
大学3年生になり下宿先に愛車で行くと、クルマ好きの友人から『いっしょに走りに行こうよ』と誘われ、リアルにクルマを操っている感覚とその魅力にハマってしまったという。ギターを握っていた手は、いつしかステアリングを握る手へと変わっていったと苦笑いした。
「欲を言えばマニュアル車がよかったんですけどね〜。心配性の父親が『危ないから絶対にダメだ』と反対したんです。その割には、エアロパーツを装着して帰省しても何も言われなかったですけどね(笑)」

そんなスプリンタートレノからヴィッツRS(NCP13)に乗り換え、さらに本格的にスポーツ走行を続けたいと感じたタイミングで、オートマでも速いと感じる86(ZN6 )へと愛車をステップアップさせてきたというsayaさん。
そして現在の愛車であるGR86に乗り換えたことで、余裕のある排気量を生かしたトルクフルなエンジン特性だけでなく、回転が上がるにつれて素直に伸びていくパワーも堪能できるようになったそうで、86でも十分だった戦闘力はさらに高まったそうだ。
「あとはL.S.D.を組んだこともスポーツ走行するうえで効果的だったし、それから…」と熱心に楽しそうに愛車について語る様子を見ていると、娘さんがどんどんクルマにハマっていくのを止めることができなかったお父様の気持ちが何となく分かる気がした。そして、そういう所がいいところだとDaiさんは言う。

「夫婦で趣味が一緒って素敵だよね〜と言われるんですけど、お互いに負けたくないと、どうしても張り合っちゃう時があるんですよ。ですから、ダブルエントリーする時はクラスも分けますし、近場の走行会に行く時はお互い自分のクルマで出場するようにしていますからね。妻の好きなことを否定せず、共に楽しもうということです」
sayaさんも同じことを話しており、完全なるクルマ好きコンビで相思相愛のご夫婦を見るとニヤニヤしてしまう。それくらいお似合いなのだ。

そんな旦那様であるDaiさんは独身時代、高校3年生の時に見ていた『ビデオオプション』の影響を受け、それにならって数々のカスタマイズを施したアルテッツァ(SXE10)に乗っていたそうで、そんなお2人が出会ったキッカケは、とあるオフ会だったという。
sayaさんは「当時ヴィッツRSに乗っていた私とは、かけ離れたタイプのいじり方をしているな、と興味を持ったんです」とのこと。
いっぽうのDaiさん曰く「レカロのフルバケットシートを装着して、TE37にアドバン・ネオバを履かせたヴィッツRSで颯爽と現れた女性ドライバーに衝撃を受けましたネ~」と、当時の印象を語ってくれた。

それから幾ばくかの年月が流れて夫婦となり、スポーツカー好きだった二人の活動の場はオフ会からスポーツ走行へと移行。本格的にサーキットを走り始めるようになっていったという。
「『走っていて何が楽しいのですか?』と聞かれても、そんなことは考えたことはないですね。理由もないくらい楽しいんですよ。勝てたら嬉しくって次も頑張ろうと思うし、逆に負けたら悔しい~!! って、一生懸命練習するじゃないですか。そうして、気付けば約20年が経っていました」とsayaさん。

  • GAZOO愛車取材会の会場であり石川県政記念 しいのき迎賓館で取材したGRヤリス RC(GXPA16)

    GRヤリス RC(GXPA16)

Daiさんは、こんなsayaさんだったからこそ、今もGRヤリスでスポーツ走行を楽しめているという。というのも結婚後、程なくして愛機アルテッツァをサーキットで全損させてしまい、もう走ることを辞めようかと思うこともあったそうだ。
「ショップのデモカーですか? と言われるくらい仕上げていたんです。それもあって、全損させてしまった時に心が折れちゃったんですよね…。それと、いじり過ぎたアルテッツァに疲れを感じていた部分もあったのかな。いろいろと気を使うことが多いクルマだったから」
かくして、1人1台クルマを所有することが多い石川県で、一家で1台という状況になってしまったこの時期のことを、Daiさんは“暗黒時代”と呼んでいるそうだ。

そして、このアルテッツァの一件にはこんな裏話も…
なんと、sayaさんは全損してしまったアルテッツァからまだ使えそうなパーツを取り外して売却。しかもDaiさんの新たなマイカー購入の資金にするのではなく、自身の愛車のパーツ代にしてしまっていたという。
「そうか…。普通の人だったら、旦那さんの新しいクルマのためにお金を工面する場面だったんですね。私は考えもしなかったです(笑)」と笑うsayaさんは、まわりの仲間から“クルマバカ”と呼ばれているそうだが、きっとこの逸話も影響しているに違いない!?

そんなsayaさんが現在乗っているGR86には、小柄なドライバー向けに設計されたBRIDEのZETAⅣ VERIAというフルバケットシートを装着。他のBRIDEシートと比べ、腰からウエストがしっかり絞れているので、華奢なsayaさん乗ってもコーナリング中でもガッチリとホールドしてくれるそうだ。
そんな大満足の逸品ではあるが、少々の懸念材料も。サーキット走行の際、夫婦でダブルエントリーをすると、Daiさんの体型では本当にギリギリいっぱいのため、これ以上太ってしまうとシートに座れなくなってしまうのだとか。そのため最近はドライビングテクニックだけではなく『絶対に太ることができない』というプレッシャーとも戦うことになっているそうだ。

いっぽう、Daiさんは3年間で85,000km走ったこともあったくらい、長距離を走ることが多いという。そんな車内で楽しみながら過ごすために、重要な役割を果たすアイテムがカーオーディオ関係。以前乗っていた愛車に組んでいたものをGRヤリスに積み替え、新しいシステムに仕上げ直したのだという。車内にWi-Fiを飛ばすことでインターネットも使えるようになり、AmazonのFire Stickを導入して音楽だけでなく動画も再生できるようにしている。
「何が良いかって、車内でJSPORTSが見れるようになったことです。ここでSUPER GTの様子が生中継されるから、例えば鈴鹿サーキットに行く時はチーム紹介とフリー走行をチェックしてから現地で予選を見るんです。推しのレーサーが何人かいるから、頑張っているところは見逃したくなくて。推し活ですね(笑)」

冬になると女神湖で開催される氷上走行会に行き、時速20km/hという超低速域の中でクルマをスライドさせて、マシンコントロールの練習をする。その他にも大分県のオートポリスサーキットで開催されている『86/BRZだらけの走行会』は皆勤賞だそうで、石川県から大分県までの片道約1,000kmを自走で往復し、サーキットで思う存分走った後には九州の86/BRZ仲間と交流するのが恒例になっているのだとか。またパワースポットや秘湯巡り、B級グルメを堪能するなど、3泊4日でトータル2,000kmくらいは走るそうだ。

  • GAZOO愛車取材会の会場であり石川県政記念 しいのき迎賓館で取材したGR86 SZ(ZN8)とGRヤリス RC(GXPA16)

    GR86 SZ(ZN8)とGRヤリス RC(GXPA16)

「大好きなことを大事にしたい。そう思いながらクルマと共に過ごしてきました」
まだまだ挑戦したい事が沢山あるというご夫婦は、これからも全国各地へとクルマを走らせ、様々な場所でスポーツ走行を楽しんでいることだろう。

取材協力:しいのき迎賓館(石川県金沢市広坂2丁目1-1)
(文: 矢田部明子 撮影: 平野 陽)
[GAZOO編集部]

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