『クルマはトモダチ』ロードスター大幅改良、これぞ決定版!・・・山田弘樹連載コラム
みなさんゴキゲンよう!
今回は待望の、ロードスター「大幅改良モデル」です。
詳細はcarview!(カービュー)にも寄稿したので、お時間があればご一読ください。
ということでここではいつも通り、マニアックに行っちゃいます。
いやはやその進化っぷり、すごかった。
ロードスターといえば'22年に「990S」が登場し、スマッシュヒット。「これぞロードスターの決定版だ!」と話題になったわけですが……。
ほんと清水ダイブで990Sを買ったオーナーさんたちが可哀想になってしまうほど、今回の大幅改良でロードスターは良くなった。
今度こそこれが、決定版だと思います。
「ん? だったら新型でも、990S出せばいいじゃん!」と思うかもしれませんが、残念ながらそれは不可能。
なぜなら今回の改良で重量が増加して、一番軽い「S」でも車重が1010kgになってしまったのです。
コスト的な問題も、当然あるでしょう。とても990kgは実現できないという理由で、990Sはディスコンしてしまいました。
ライトウェイトスポーツカーにとって、軽さは正義!
「だったら990Sの方が走りはいいんじゃない?」と思うかもしれませんが、私は新型を推します。気持ちはわかるんだけど、悲しいかなこれが進化なのであります。
そんな超熟ロードスター、何がいいって操舵フィールが抜群です。
ND史上(ここがポイント)、最高の出来映え。
走り始めて、普通にハンドルを切っただけでわかる。
感じるのですよ、確かな手応えを。
実を言うとこれまでワタクシ、「ND」にはちょっとしたモヤモヤを感じていました。その類い希なるパッケージングをして「いいクルマ」だとはわかっていても、なーんかスッキリしないところがあった。
それは曲がり初めの、やや希薄な接地感。ハンドル切り始めのインフォメーションが少ないから、スピードレンジを高めてコーナーへ入って行くのが、あまり好きじゃありませんでした。
だから個人的には足周りを少し固めた「RS」や、「NR-A」が好きだったのですが、
そもそもはロードスターって、普段の気持ち良さを大切にするコンセプトじゃないですか。
そこでダンパーの減衰力やバネレートを高め過ぎてしまうと、その良さ、いわゆる“ヒラリ感”が消えてしまうのかな?
だからそれ以外のモデルは、こういう味付けなのかなぁ? って思っていたんです。
ロードスター最大の美点は、このサイズのスポーツカーのフロントサスにWウイッシュボーンを奢ったこと。初代から一環するこの意地とこだわりは、誰にも真似ができないところだと思う。195/50R16のタイヤサイズは変わらず。足周りにも変更は全くないというのだが……本当!?
だがしかーし!
接地感不足の正体は、電動パワステ(EPS)のフィーリングだったのです。
今回の改良でステアリング系はまずモーターが刷新され、その制御もマツダが自分でプログラミングするようになりました。加えてラック周りも、摩擦係数を低減しました。
すると、切り始めから操舵インフォメーションが、断然豊かになったんです。
もう、「なんだよー、早くやってよー!!」って感じ。
でもできてたら、やってますよね。何度もいいますが、これが進化というものです。
それにもまして残念なのは、このEPSが前期型にはアップデートできないということ。日本のハイオクガソリンにキャリブレーションしたエンジンマッピングも、新しくなったマツダ・コネクトも、電気が関係するメニューは全て、レトロフィットできません。
ただですね、マツダの開発メンバーは「電動パワステ“だけ”では、ここまで大きくクルマは変わらない」と言うのですよ。
その隠し球が、今回新型となった「アシンメトリックLSD」。めっちゃマツダらしい、マニアックさ全開のリミテッド・スリップ・デフです。
その作動は、いわゆる機械式LSDの「1.5WAY」と同じ。ただし制御が逆で、アクセルオフ側の方のが、オン側よりも作動制限率(効き)が高いんです。
ロードスターは前後重量バランスがとてもよいスポーツカーですが、ブレーキングでフロント荷重を高め過ぎると、リアが不安定になる傾向があります。オープンボディだからフロントの足周りを固めて、ノーズダイブを抑えることもあまりしたくない。
このときアクセルオフ側のデフロック率を高めたアシンメトリックLSDは、ヨー慣性モーメントを打ち消してくれるわけです。直進しようとする力を強めて、オーバーステアを打ち消すわけですね。
対してオン側を緩めに取っているのは、まず後輪駆動でそもそもトラクションが良いから。そこでロック率を高め過ぎてしまうと、今度は逆にヨーモーメントが強くなりすぎて、一般的なドライバーだとスピンしやすくなってしまいます。
もっとLSDをガッツリ効かせたい人は、機械式LSDを選んでくださいね、とうわけです。
ちなみにこのオフ側・強/オン側・弱の配分は、とても珍しいんだそうです。そしてロードスターの他にも一台、有名なスポーツカーがこのセッティングを採用しているといいます。
どれだかわかりますか?
それは、ポルシェ911(のLSD付きモデル)だそうです。
つまりこのセッティングは、ターンインでオーバーステアになりやすく、トラクションがしっかり掛かるスポーツカーに有効なわけですね。勉強になるなぁ。
だから前期型オーナーも、アシンメトリックLSDの装着は有効です。
イニシャルトルクが前期型のスーパーLSDに比べて半分くらいだから、普段はさらに曲がりやすく。そして雨の日はもちろん、ビシッと走らせたときに、安心感が高まる。
だから走りが良くなったというわけですね。
でもその走り、本当にEPSとLSDだけ?
私にはどうしても、足周り換えたでしょ!? としか思えないんだよなぁ。
後編ではそれについて、ガッツリ話します!
軽量コンパクトなFRスポーツカーといえば、ウィザムカーズ(https://www.witham-cars.com)のケータハム スーパーセヴン170で「K4GP」に出場。クラス2位を獲得しました! 雪が降る富士スピードウェイで、鼻水流しながらの7時間耐久レース。次々号でレポートします。お楽しみにッ!
山田弘樹
自動車雑誌の編集に携わり、2007年よりフリーランスに転身。LOTUS CUPや、スーパー耐久にもスポット参戦するなど、走れるモータージャーナリスト。自称「プロのクルマ好き」として、普段の原稿で書けない本音を綴るコラム。
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