全方位的な進化をうたうスバルのスポーツセダン「WRX S4」。なかでも注目すべきポイントは?

「走りや乗り心地、静粛性など、あらゆる性能を磨き上げた」とうたわれる、新型「スバルWRX S4」。なかでも注目すべき点について、モータージャーナリスト島下泰久が解説する。

新型スバルWRX S4に対する、現行モデルのオーナーが多くを占めるであろうスバルファンからの評価は、実はなかなかに辛辣(しんらつ)なようである。

まずやり玉にあがっているのがデザインだ。その特徴というか一番の驚きは、前後フェンダーに取り付けられた「スポーツサイドガーニッシュ」だろう。「SUVか」などと言われているそうだが、開発責任者の五島 賢氏によれば「昔のビス留めオーバーフェンダーの進化系のつもり」だという。空力アイテムとしても機能しており、操舵フィールの向上、挙動の安定化といった効果を発揮しているのである。

しかも、このデザインにはちゃんと布石があった。2017年に発表されたコンセプトカー「VIZIVパフォーマンスコンセプト」には、この要素が盛り込まれていた。というよりも、新型WRX S4のデザインがコレをベースとしていることは一目瞭然。予告はされていたわけだ。

思い出すのが先代WRXである。2013年のニューヨークショーで発表された「WRXコンセプト」はロー&ワイドな実にスタイリッシュなモデルだったが、2014年に登場した市販版はオーソドックスなセダンで、なんとも拍子抜けしてしまったのだった。「先代WRXでは『コンセプトカー詐欺だ』とも言われました……。ですので今回は、できるだけ乖離(かいり)のないようにしました。早い段階から販売店の皆さんにも見せて、良い評価をいただいていました。賛否はありますが、そもそも話題に上らないよりは、全然、その方がいいんです」

厳しいファンの見方に対して、その気持ちが分からないというつもりはない。確かに普通に考えれば、「?」と思っても不思議はないだろう。けれど、そのデザインにも実はこうした熱い思いや機能的価値が込められていたのだと分かったら、捉え方、少しは変わらないだろうか?

しかも乗れば進化をしっかり感じられるのが、この新型WRX S4である。その跳躍の幅は、すさまじく大きいのだ。

(文:モータージャーナリスト・島下泰久)

[GAZOO編集部]

他の試乗記情報はこちら

MORIZO on the Road