テーマは「島」、そのねらいは? 新型『クラウン』インテリアデザインの「4つの見所」

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新型トヨタクラウン』はインテリアにも見所が多い。わたくし千葉匠が「2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー」でクラウンに10点を投じた想いのなかには、インテリアも含まれる。前回はエクステリアデザイン5つの見所について紹介した。今回は新型クラウンのインテリアについて、4つに整理してお伝えしよう。

◆見所1:大きなアイランド
新型クラウンのインテリアのデザインテーマは「アイランド・アーキテクチャー」。アイランド=島だから、センターディスプレイやヒーコン、シフト回り、インパネ両サイドのベントグリルといった機能部品を、それぞれ一括りにして島のようにポンポンと配置するデザイン手法を一般的にはアイランドと呼ぶ。これは日本だけでなく欧米でも同じだ。

しかし新型クラウンはもっと大きなアイランドを考えた。ウインドシールドの窓下からドアトリムへ続くゆったりとしたラウンドを背景と見立て、そこにインパネの島、センターコンソールの島、ドア・アームレストの島を配置。例えばインパネの島にはメーターやセンターディスプレイ、ヒーコン、ベントグリルなどの機能を集約した。

従来のアイランド・テーマでは、せっかく島ごとに機能を集約しても、それがあちこちに点在するために煩雑な印象になちがちだった。そこを解消し、背景と大きなアイランドに整理したのが、このアイランド・アーキテクチャーの見所だ。

PCD=プロジェクトチーフデザイナーとして新型クラウンのデザインをまとめた宮崎満則氏(MSデザイン部室長)は、「お客様の嗜好に応じて見え方を変える、という考え方が今まではあまりなかった」と告げる。その思いがアイランド・アーキテクチャーを発想した原点だったというのだが、それはいったいどういうことだろう?

◆見所2:アイランドの配色でキャラ変
エクステリアと同様に、インテリアにも「バイトーン」の仕様が用意されている。例えば上が明るい色で下が黒というような、普通のツートーンではないからバイトーンと呼ぶ。そのこだわりもエクステリアと同じだ。

バイトーンには3タイプあるが、なかでもフロマージュ内装とブラック/イエローブラウン内装は好対照の配色を見せる。

フロマージュ内装はアイランド・アーキテクチャーの背景になるところが明るいフロマージュ色(オフホワイト)。窓下からドアへフロマージュ色を延ばして空間の広がりを感じさせながら、ドアから助手席膝前を経てコンソール側面へとラウンドするフロマージュ色で助手席乗員を優しく包み込む。

それに対してブラック/イエローブラウン内装は背景をブラックでまとめ、インパネのアイランドとドア・アームレストのアイランドがイエローブラウン。アイランドを目立たせ、そこに集約した機能に視線を誘う配色だ。

ちなみにフロマージュ内装はシリーズパラレル・ハイブリッド(お馴染みのTHS)のGグレードで選べ、新開発デュアルブースト・ハイブリッドのRSグレードはブラック/イエローブラウン内装だけの設定。どんな走りを期待してどのグレードを選ぶか? その嗜好に応じて配色を違えた。これをやることを視野に入れて、「アイランド・アーキテクチャー」が発案されたのだ。

フロマージュ内装はシートもフロマージュ色。前席はインパネからドア、さらにシートへとつながる明るい色で包み込まれる。後席はバックレストからドアトリムへと明るい色がラウンドしながら、空間のイメージが前方にスッっと抜けていく。明るいフロマージュ色で広さ感を担保しながら、前後席それぞれにラウンジのようなゆったりとした包まれ感を表現する配色だ。

一方、ブラック/イエローブラウン内装ではブラックが基調色で、ドアではアームレストだけがイエローブラウン。それによって室内空間を低重心に見せていながら、シートのサイドサポート部分にもイエローブラウンを入れてサポート感を視覚化。RSの「走り」を選びたい嗜好に応えた配色なのである。

◆見所3:ソフトにしすぎない時代感
インパネアッパー部の上面はソフトな触感のスラッシュ成形。それ以外にも人が手を触れそうなところ、例えばコンソール側面、ドアトリム、アームレストなどには合皮を張り込んで質感を高めた。もちろん合皮と基材の間には発泡ウレタンを入れている。しかしあまりソフトに感じない部位が多い。

アームレストはソフト。コンソール側面も膝が当たるニーパッド部分はソフトなのだが、そこから後ろは裏にある発泡ウレタン層が薄く、指で押してもほとんど凹まない。ドアトリムは凹面形状を実現するために、どうやら合皮と発泡ウレタンと基材を一体成形しているようだ。発泡ウレタン層が成形時の圧力でつぶれてクッション性が減るし、普通に合皮を張ったのでは出来ない凹面形状だから、合皮張りの良さを感じにくいというのが正直な印象だ。

それを宮崎氏に指摘すると、「乗る人のための空間を1mmでも広くしたい、と考えた」。ドアトリムの凹面形状は、その想いを象徴する。そして、「分厚い発泡ウレタン層で柔らかさを主張する時代なのかどうか。そこをかなり議論した」と続けた。

旧来のしがらみをかなぐり捨てて、新たな価値観を提示する新型クラウン。それゆえ発泡ウレタン層をあえて薄くして、スッキリとしたモダンな見栄えを求めたというわけだ。デザインの想いはわかるが、柔らかく見えるところは触感も柔らかくしてほしい。ここは今後の進化に期待したい。

◆見所4:高めのヒップポイントが示唆すもの
ヒップポイントの地上高は、前席が630mm、後席が610mm。「セダン」を標榜しながらも、乗降性を重視した高めのヒップポイントだ。その意図はわかるが、普通なら後席からの見晴らし感、言い換えれば乗る人全員の視界を考えて前席より後席を高くするもの。後席のヒップポイントを前席より低くしたのは、クーペ的なファストバックのルーフラインを優先したからだろう。

踵からヒップポイントまでの落差=ヒール段差は、前席が275mm、後席は290mm。着差姿勢としては普通のセダンより少しだけアップライトになるが、ほぼ「セダン感覚」である。逆に言うと、とくに前席では「踵の位置がちょっと高い」という印象がつきまとう。なぜそうなのか?

今回のクラウン・クロスオーバーは新世代クラウンの第一弾。これを含めて4タイプのクラウンが用意されていることは、ご存知の通りだ。5ドアの『クラウン・スポーツ』、ワゴンの『クラウン・エステート』、ファストバックセダンの『クラウン・セダン』が出番を待っている。

このうちクラウン・スポーツのデザインは、実は2021年12月にトヨタがBEV戦略の発表会で数多くのスタディモデルを一挙公開したなかに存在していたもの。赤いボディカラーも当時のまま、7月の新型クラウンのワールドプレミアの壇上に展示された。

これはつまり、今回の新型クラウンのプラットフォームがBEVも視野に開発されたことを意味する。『カムリ』と同じGA-Kプラットフォームをベースとしながらも、そこに大幅な改良を加えた。改良点のひとつにBEV化への対応があったのだろう。前席の踵=足下フロアの高さは床下にバッテリーを積むためにそれが必要だったから、と考えられる。

新型クラウンのクロスオーバーにBEV仕様が追加されるかどうかはわからないが、クラウン・スポーツにBEVが用意されることは確実。それらとは違うFRプラットフォームを使う新型セダンには、おそらくFCEV=水素燃料電池仕様が存在するはずだ。FCEVはエンジン車以上に冷却風を必要とする。新型クラウン・セダンの大開口グリルは、それを見越してのデザインに違いない。

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