「世界一のクルマ」ではないかもしれないが、私にとっては世界一の“ツール”スバル レガシィ アウトバック X-BREAK

東急田園都市線青葉台駅から徒歩15分という、けっこうな距離を歩いた場所に唐突に現れる、洒落たメガネ専門店『ヤマセングラスワークス』店長の堀部伸夫さん。そのお人柄は、傍から見るならば「モノが大好きで凝り性な、お金持ちの趣味人」ということになるはずだ。

愛用のロードバイクは、世界のトップチームに機材を提供している「SPECIALIZED」のフレームに、イタリア「Campagnolo(カンパニョーロ)」の各種パーツを組み込んだ「最高級レベルの一台」と評しても決して大げさではないもの。もうひとつの趣味である写真撮影には、ニコンの最上級一眼レフ「D5」に完全プロスペックのレンズという組み合わせで臨む。そしてハーレーのモーターサイクルを駆り、ドローンを飛ばし、K.Yairiのアコースティックギターをつま弾く。

そんな堀部さんの姿を見たら、おそらく誰もが当然言いたくなるだろう「多趣味でいらっしゃるというか、本当に“モノ”がお好きで、そしてお金持ちなんですねぇ……」という身も蓋もない感想をご本人相手に述べてみると、やんわりと否定された。

「モノが好きというよりも、そのことをやっている“状態”が好きなんですよね。で、何かをやるにあたっては――当たり前の話ですが――その分野で“いちばんいいモノ”を使うほうが気持ちいいし、良い結果が出やすいじゃないですか?この自転車もニコンのD5もそういう意味合いで買ったものですから、『とにかくモノが大好き』というのとはちょっと違うと、自分では思っています。あと、決してお金持ちではありませんし(笑)」

なるほど確かに、何をするにしても「中途半端な入門者用モデル」を使っていると、ごく最初の段階はいいとしても、そのうちすぐに「これ以上の機材さえあれば、もしかしたら自分はもっとうまくやれるかもしれないのに……」という気持ちにさいなまれることになる。であるならば最初から「一番いいやつ」を手に入れてしまったほうが、余計なことを考えず、自分がやりたい行為や状態に没頭できる――というのが堀部さん流の考え方なのだろう。なるほど、確かに。

だがそんな堀部さんが手に入れた――というか、ここ3台連続で購入している「スバル レガシィ アウトバック」についてはどうなのか?確かにスバルのフラッグシップSUVではあるが、世の中には「ベンツのワゴン」とか「ポルシェのSUV」とか、そういったモノもいろいろとあるはずだが?

「まぁ例えば海辺のリゾートか何かに行くには、メルセデスのステーションワゴンあたりがハマるでしょうし、遊びグルマとしてはポルシェとかが最高ですよね。でもツール(道具)としては、アウトバック以上のモノってあんまりない。そういった意味で、レガシィ アウトバックって実は世界でもトップレベルのクルマのひとつじゃないかと思ってるんです」

若い頃から「クルマは切らしたことがない」という堀部さんが、最初のレガシィ アウトバックを購入したのは今から6年前。当時はミニ クロスオーバーのクーパーSに乗っていたが、ドカ雪が降ったある日、駅で立ち往生している息子さんをクルマで迎えに行ったことがきっかけだった。

「FF車でもなんとかなると言えばなるのですが、やはり八王子市民は――あ、言い忘れましたが私、八王子のはずれのほうの自然豊かな場所に住んでるんです――やっぱり四駆だなって痛感したんですよね。それで『四駆といえばスバルだろう』ぐらいの軽い気持ちでディーラーに行ってみたら……アウトバックというクルマのすべてが、わたしのライフスタイルにピタッと合致してることがわかっちゃったんです。その場で即日、買いましたよ」

約6年前に購入したアウトバックは、スバルファンが「A型」と呼ぶ最初期モデル。その3年後に「D型」のアウトバックへと乗り替え、そして今年7月、最新「F型」のX-BREAKに買い替えた。

「乗ってるうちにどんどんわかってきたのですが、スバルってバカ正直でマジメなメーカーですよね。『儲かる・儲からない』ではなく、『それに乗るユーザーにとっての善と悪』しか主には考えてないというか。アウトバックというクルマのさまざまな点に対して『バカ正直だなぁ……』とあきれると同時に、そういった実直さがとても好ましく思えるんです。まぁその分、ちょっと前までのスバル車は『味より栄養!』みたいな感じでしたが(笑)、今のアウトバックは外観も内装もけっこういい感じですからね」

まるで折り紙で作ったかのようなパキパキのプレスラインを持つクルマばかりになった昨今、現行型レガシィ アウトバックの「ぬめっとしたプレスライン」も大いに魅力的なのだという。

「あと、このクルマは日本ではあんまり売れてないんだけど、『でも北米ではかなり売れている』という部分にロマンを感じますし、X-BREAKならではの『クロスバー ビルトインタイプ ルーフレール』のビジュアルも気に入ってます。まぁ機能としては一生使わないかもしれませんが(笑)、なんかカッコよくていいじゃないですか」

堀部さんにとって最高のツールである2020年式レガシィ アウトバック X-BREAKにロードバイクを載せ、あるいはフライフィッシングの道具またはニコンの望遠レンズ等々を載せ、仕事や家の用事の合間に生まれる“すきま時間”を、趣味人としての活動に充てている堀部さん。そんな彼が最近凝っていることのひとつがアマチュア無線。それも、屋外で行うモールス通信だ。

「世代的にね、小学生の頃はご多分にもれず自宅でのハム(アマチュア無線)に凝ってましたが、最近はもっぱらこれ、アウトバックで出かけた先でやる“モールス”なんですよ」

モールス通信とは、今や商用としては使われることがなくなったモールス符号を使う通信。戦争映画などでしばしば見る「ツーツツーツ、ツーツーツツー」などの、短点と長点を組み合わせた符号だけで交信が行われるアレだ。

「今は遠い場所の誰かと話したくなったら携帯電話を使えば済んでしまう時代なので、逆にモールスという原始的でシンプルな通信手段が面白く思えるんですよね。昼間とかは電波が電離層に反射しすぎて、近くの人、例えば東京・長野間ではぜんぜんつながらないのに、逆に北海道の人とはつながったり。あとは太陽の黒点活動の影響を受けたりもするので――なんていうのかな、“自然”を感じるんですよね。地味だけど、やってみると面白いですよ」

モールスによって「誰かとつながる」ということももちろん楽しんでいるのだろうが、それ以上に、堀部さんは「宇宙や地球といった“自然”とつながること」こそが好きなのだろう。考えてみればモールス通信だけでなくロードバイクも写真撮影も、「風を感じる」「光と影をとらえる」という意味で、「地球と戯れるためのアクティビティ」だと言える。

そんなアクティビティを自然体で楽しむための相方としては、なるほど確かに、スバル レガシィ アウトバックという非常にタフで、そして適度に上質なクロスオーバー4WDは、どんなに高価で豪華な舶来のワゴンよりも“適任”なのかもしれない。

(文=伊達軍曹/写真=阿部昌也)

[ガズー編集部]

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