車好きなら心震える。日本発のクルマ映像の映画祭「INTERNATIONAL AUTO FILM FESTA」・・・寺田昌弘連載コラム

「日本は、クルマが主力の産業で、世界的なカーメーカーやブランドが多く存在する特別な市場。この日本から映像を通じてクルマの文化を深め、アートの視点で国内外に発信する映画祭をやってみたい」と、メディア仲間で、ビデオグラファーの清水喜之さんが仰っていました。

確かに映画やCM、SNSでさまざまな映像がある中で、クルマをキーに映像作品が集うフェスティバルがあったらおもしろい!と感じました。さっそく実行委員として迎え入れていただき、「INTERNATIONAL AUTO FILM FESTA」が始まりました。

今も覚えているクルマの映像の数々

登場しているクルマを見て、その映画を思い出すことはありませんか。

デロリアンDMC-12を見れば「バック・トゥ・ザ・フューチャー(1985年)」、アストンマーティン・DB5を見れば「007ゴールドフィンガー(1964年)」、シボレー・インパラだったら「アメリカン・グラフティ(1973年)」。

また、パリを舞台にアクロバティックに走るいすゞ・ジェミニのCMは、30年以上経っても忘れられません。日産・セフィーロは何作もあるなかでも特に、クルマがバックしていくというのが、前進が常識だった当時は、とても衝撃的で斬新なものでした。

また、ロードムービーである「幸福の黄色いハンカチ(1977年)」に出てくるマツダ・ファミリアや「ドライブ・マイ・カー(2021年)」のサーブ900は、どちらもボディカラーが赤でしたが、名脇役的存在で主人公だけでなくストーリーまでうまく運んでいました。

さらにクルマの走りを神格化させた「ワイルド・スピード(2001年~)」、リュック・ベッソン 製作の「TAXI(1998年)」、「トランスポーター(2002年)」などカーアクションも役者の感情まで伝わる走りが印象的です。

こうしてクルマと映像は、単に走りがかっこいいだけでなく、クルマの動きによって人の思いまで伝えてくれる奥深いものだと思います。

第1回「INTERNATIONAL AUTO FILM FESTA」開催

  • 実行委員。右上/発起人の清水喜之さん。右下/デザイナーの内田雅人さん。左下/モータージャーナリストの生方聡さん。左上/私、寺田昌弘。

発起人の清水喜之さんとモータージャーナリストの生方聡さん、デザイナーの内田雅人さんが実行委員会を立ち上げ、私も参画して始まった第1回「INTERNATIONAL AUTO FILM FESTA」。

まずは、クリエイティブ人材の発掘と育成を目指し、「作り手 to 作り手」「作り手 to 視聴者」との交流ができて、安全な撮影環境とリーガルな撮影の啓蒙をしていくことを目的としました。

初回ということもあり、テーマやカテゴリーは設けず、ひとつだけ「クルマへの愛があること」を参加条件にしました。

参加者は国内外問わず、世界中のクリエイターに参加してもらうために、海外メディアなどにも働きかけ、海外からもエントリーが出始めました。2023年1月1日からエントリーを開始し、どんな作品がエントリーされるか、ワクワクしながら締め切りの2月28日を待ちました。

世界10カ国、46作品がエントリー

  • バラエティーに富んだ作品がエントリー

初回は認知度が低いにも関わらず、世界10カ国からエントリーがあり、大変うれしかったです。作品数は46とまだまだですが、企業CMからドラマ、ドキュメンタリー、CG、アニメーションとバラエティーに富んだ映像が集まりました。

1作品ずつ観ていくのですが、長い作品は1時間以上のものもあり、全作品を観るまでに相当の時間を費やしました。1次選考を経て選ばれた作品は、とてもバラエティーに富んでいました。

1966年式フォルクスワーゲンT1 Sambaの愛車を語る女性のインタビューは、とても愛溢れる思いが伝わってきましたし、ものすごく照明にこだわって、コストと時間をかけて撮った美しいポルシェが、フルCGで制作されていたのを後で知ってびっくりしました。

  • フォルクスワーゲンT1 Sambaの愛車を語る女性

夢のガレージハウスを作り上げ、マセラティMC20で走るストーリーは、まさしくクルマ好きにとって憧れ。

またプリウスが1970年に登場する設定で、その機能をコミカルに表現したショートムービーは、昔の怪獣映画を観ているようでおもしろく、アニメーションでクルマの今までとこれからについて投げかけをしている作品も社会性があって考えさせられるものでした。

さらにレーシングカーの躍動感ある走りの作品とそのメイキングの2本同時にエントリーしたかたもいて、両方を観ればどうやって撮影すると、この走りの映像ができるのかがわかってとても興味深いものでした。

  • アメリカのモトクレーン社のRADICALを使用して撮影されたG/MOTIONの作品

  • こちらは動かなくなったクルマと主人公との距離感が感慨深い作品

数ある作品の中で、特に胸に刺さったのが、「愛されるクルマってなんだろう?」をテーマに、28年間、家族の一員として15万㎞以上走って、思い出を作ってきた1台のクルマとそれを運転できるようになった息子とのショートムービーです。

何気ない風景、ただ一般道を走っているのですが、演者と撮影者の心のつながりまで伝わってきて、思わず何回も見入ってしまいました。この作品が今回の「International Auto Film Festa賞」を受賞しました。

  • 入賞者に渡される盾

  • International Auto Film Festa賞を受賞した作品

受賞作品は公式ページで観ることができます。
INTERNATIONAL AUTO FILM FESTA公式ページ:https://autofilmfesta.net/

新たなクルマとの映像に出会うため、第2回が楽しみ

この初めての取り組みを取り上げてくださったメディアは、クルマメディアはもちろん、東洋経済新報社、時事通信社、朝日新聞、産経新聞など一般紙も多く、153もの記事に取り上げていただきました。

「INTERNATIONAL AUTO FILM FESTA」の持つ社会性に注目していただけたことがとてもうれしかったです。10ヶ国からエントリーされた作品は、各国のクルマとの関わり方など、文化まで映し出されていて、多様性に富んだものとなりました。

すでに第2回に向けて実行委員会は動き始めました。募集開始は2024年1月1日。今やスマホひとつで映像作品が作れる時代なので、じっくり構成を考えてから撮るもよし、普段撮っておいた動画をおもしろく編集するもよし。

クルマがテーマであれば、どんな作品でもエントリーできるので、ぜひ今から準備して第2回に応募してみてはいかがでしょうか。新たなクルマの映像に出会えることを楽しみにしています。

写真:INTERNATIONAL AUTO FILM FESTA/文:寺田昌弘

ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。


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