クルマ好きも楽しめるボートショーで、スーパーカーに酔いしれる・・・寺田昌弘連載コラム

日々暖かくなってきて、マリンレジャーが待ち遠しくなってくるこの季節。今年もパシフィコ横浜・横浜ベイサイドマリーナの2つの主会場と、八景島マリーナ・オンライン会場で「ジャパン・インターナショナルボートショー」が開催されました。

230社・団体が出展し、主会場では4日間で35,163名が来場して盛り上がりましたが、ボートやヨットはもちろん、豪華なクルマが間近に観られるのが楽しみなイベントです。今回はどのようなクルマが展示されていたか、さっそくご紹介しましょう。

風格漂うロールス・ロイスとベントレー

ヨットで地中海を旅していたとき、スペインのイビザ島のマリーナに入港すると、軽く100フィート(30.48m)を越えるスーパーヨットがすでに停泊していて、国旗を見るとすべてイギリスでした。

シャワールームでそのスーパーヨットのクルーに話を聞くと、イギリスからジブラルタル海峡を通り、地中海までオーナーのご家族を乗せて数日の旅をし、オーナー自身は飛行機でイビザ島へ来て合流するとのこと。

ただ、一代でこのスーパーヨットを購入するのではなく、何代もかけてやっと手に入れるオーナーがイギリスには多いとも。さすが伝統と格式を重んじる国だけあり、スーパーヨットのオーナーになるには、長い年月に裏付けられる品格が必要なようです。

これはロールス・ロイスやベントレーにも同じことが言えそうです。どちらのクルマもオーナーの品格をさらに引き立たせてくれることでしょう。

日本に1台しかないPIKES PEAK”100”Edition

  • Bentley Continental GT PIKES PEAK”100”Edition

ベントレーが創立100周年を迎えた2019年、アメリカ・コロラド州で開催されるパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムのプロダクションクラスで優勝(10分18秒488)し、それを記念して限定生産されたBentley Continental GT PIKES PEAK”100”Edition。スタッフによると、日本にはこの1台しかないということでかなり貴重な1台。

総排気量5,950ccでW12気筒ツインターボ。駆動方式はAWDで最高出力635ps/6,000rpm、最大トルク900Nm/5,000rpm。カーボンボディで軽量化され、フロントグリルに「100」がペイントされています。1920年代にル・マン24時間で5度の優勝をしたベントレーは、最高のグランドツーリングとして長い伝統と風格を積み重ねています。

威風辺りを払うロールス・ロイス ファントム

  • Rolls-Royce PHANTOM SERIES Ⅱ

顧客の声を聴き、シングルモルトウイスキーのように熟成期間を取りながら8代目となるファントムが誕生。2017年の発表から実に5年もの歳月をかけて磨き上げ、一目でファントムとわかりながらも、顧客からはより洗練された唯一無二の存在として歓迎されています。

そして「ロールス・ロイス・コネクテッド」を搭載したファントムⅡが誕生し、レストランへ直接アクセスしたり、車両のセキュリティ状態も確認できたりするようになりました。ロールス・ロイスならではの「マジックカーペット」な乗り心地、インテリアの細部までこだわりの美しさは、「走る贅沢」をかたちにした芸術そのものです。

2シーターのスーパーカーを観て昂る

移動するのではなく徹底的に走りにこだわる2シーターのスーパーカー。フェラーリにマクラーレン、ロータス、ランボルギーニのエキゾーストノートはF1で轟き、ハイトーンな管弦楽を奏でる芸術としてモータースポーツファンを魅了してきました。圧倒的な速さと運動性能そして官能的な音に血が湧き肉躍る躍動は、停まっていても右脳を刺激します。

ここからは2シーターのスーパーカーをご紹介します。

フェラーリのPHEV。新たな走る楽しさを創る

  • Ferrari 296GTS

V6ターボハイブリッドは、2014年以降のF1で進化し続けています。モータースポーツの最高峰でのエビデンスをもとにバンク角120°で8,500rpmでリミッターを打つV6エンジンとモーターの組み合わせは、フェラーリに新たな走りの価値を生み出しました。

動力性能はもちろん、エンジンのダウンサイズによりホイールベースが短くでき、運動性能のよさにも貢献しています。フル電動モードでは25km走れるということも驚きです。

日本7台限定生産のランボルギーニ・アヴェンタドールS

  • Lamborghini AVENTADOR S ROADSTER Japan Limited Edition

6,498ccのV12エンジンは横から見るとドライバーのスペースより長く見えます。2011年に誕生したアヴェンタドール。エンジンをかけたとき、初爆から大迫力のエキゾーストノートとエンジン音で一気に猛牛が起き、ランボルギーニの存在感が増します。

アヴェンタドールSは2016年からラインナップされ、その集大成としてジャパンエディションが7台限定で生産されました。マットなボディカラーにシャイニーなペイントが加わり、特別な存在です。

V8、V6ハイブリッドのハートの鼓動が美しいマクラーレン

  • McLaren ARTURA & McLaren GT

走りを極める軽量グランドツアラー。GTは3,994ccV8ツインターボを搭載し1,530kg。ARTURAは2,993ccV6ツインターボハイブリッドを搭載し1,510kg。

どちらもライトウェイトでハイパワーを持ち合わせ、走る悦びを極限にまで追求したモデルです。それでいてゴルフバッグが積めるくらいのスペースもあり、ロングクルーズで旅に出かける楽しさを持たせています。

スーパーチャージャーの独特な加速感がロータス・エミーラの魅力

  • THE LOTUS EMIRA V6 FIRST EDITION

ハンドリングに定評のあるロータス。405psを発生するスーパーチャージャー付き3.5L V6エンジンを搭載し、ドライバーの意のままに走る悦びを体感できるのがエミーラです。6速MTが標準で、パドルシフト付6速ATもオプションで選択できます。空力特性に優れたボディで、特にリヤにかけグラマラスなラインがとても美しいです。

スポーツカーとSUVを展示するアストンマーティンとマセラティ

海の神、ネプチューン持つ三叉がエンブレムのモチーフとなっているマセラティはボートショーにフィットするブランド。

映画「007」ではスーパーヨットとスーパーカーがよく登場し、Sunseekerのスーパーヨットとともにボンドカーとして印象強いアストンマーティン。

ともにF1で活躍し、イタリア、イギリスのブランドとして上質な走りで憧れのクルマです。今回はスーパーカーだけでなく、SUVも展示。走りのよさに居住性のよさが加わり、日本でも都市部を中心に見かけますが、その個性溢れるスタイリングは目を惹く存在です。

マリンブースに展示されていた国産メーカー

海外メーカーのクルマはカーディーラーが出展している場合が多いですが、もちろんボートショーなので、その多くはボートの新艇を中心に船外機や水上バイクの展示です。国内自動車・バイクメーカーのマリン事業が多いので、各メーカーがクルマも展示していました。

30フィート級のボート展示が多いため、ハイエンドモデルのクルマではなく、マリンレジャーを楽しむアウトドア好きの来場者に向け、テント併設のミニバンが多かったのですが、最も注目したのはホンダです。ステップワゴンを展示していましたが、一番目立つ場所にクラシカルな船外機とレーシングカーが。

創業者の本田宗一郎さんの「水上を走るもの、水を汚すべからず」の環境に対する想いのもと、1964年に開発された4ストローク船外機GB30と、同年F1に参戦し、1965年に初優勝したRA272が展示されていました。

トヨタは新艇のPONAM-31 Gradeとともにクラウン・クロスオーバーを展示。PONAMのデザインをモデリスタがトヨタマリンと共同で行い、クラウンもモデリスタでカスタマイズした統一感ある展示です。

  • TOYOTA CROWN CROSSOVER RS "Advanced"。その奥に新艇のPONAM-31 Z Grade

スズキはスペーシア・ベース、カワサキはジェットスキーとともに国内販売を開始したオフロード四輪バギー、テリックス4 S LEを展示し、昨年に引き続き注目の的でした。

ほかにもスズキ・ジムニーにけん引免許不要のキャンピングトレーラー、キャンピングカーやトレーラーヒッチ、さらにEVコンバートなど飛躍した展示もあり、マリンレジャーファンはもちろん、クルマ好きにもとても楽しめるイベントでした。

写真・文/寺田昌弘

ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。


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