野尻智紀圧勝!宮田莉朋ランキングトップ、小林可夢偉は初優勝を逃す ~スーパーフォーミュラ第7戦~

灼熱のサーキットから帰りました。多分、これまでで一番暑く感じたかも。体調を崩す方もやっぱりいらしてね。心配だらけの現場でしたが、天王山の戦いを終え、あと残すは最終ラウンドのみとなりました。シーズンを駆け抜けるのは早すぎですね。

決勝日は、オープニングラップで多重クラッシュが起きたのですが、二輪でも大きなアクシデントがありましたので悲しくなりました。

かと言ってモータースポーツを批判するつもりはないし、今後の対策などはその道のプロにお任せし、これからも応援して行きたいと思います。では、ここでは3つのポイントについて振り返ります。たくさんあるんだけどね。

野尻智紀選手プライドの優勝

  • 1号車 野尻智紀選手/TEAM MUGEN

まずは、予選。Honda勢の圧倒的な強さに後塵を拝したトヨタ勢。関口雄飛選手がトヨタ勢最上位の5位でした。今季、予選が課題だったので、チームイメイトの平川亮選手も含めようやくチームは抜け出したのかな?とも思いましたし、もてぎが得意なチームだからこその面目躍如。

過去にもてぎでは、チームインパルの2台で幾度かトップ争いをしているので、チームとしてはここでムードを一気に変えたいところ。クルマもタイヤも変わった今季でも、得意なことに変わりはなく安心しましたが、厳しい予選でしたね。

野尻智紀チャンピオンは、すごい復活劇を見せましたね。X(旧ツイッター)で、大差をつけ?勝ちたいというようなことをポストしていましたね。ランキングも1戦欠場した分、トップから離されていましたので、ここで踏ん張って最後の鈴鹿2連戦に繋げられれば…との思いがあったことでしょう。

しかし、理想通りの展開をやってのけるのかな?と思ったら、はい、ちゃんと立て直して来ました。やっぱりそこが今の彼とチームの偉大さですね。しっかり“らしさ”を発揮しました。

  • 15号車 リアム・ローソン選手/TEAM MUGEN

スタートのチームメイト同士のバトル。1コーナーから2コーナーの立ち上がり。迫力ありました(公式YouTubeをご覧くださいね)。大クラッシュになってしまった訳ですけどね。

チームメイトこそ最大のライバル、リアム・ローソン選手を相手に引く理由などありません。ですよね? そのバトルによりバランスを崩したチームメイトのローソン選手を発端とする多重クラッシュが発生。スタートしたばかりでリタイアとなったのは3台。無念ですが批判ではありませんよ。冷静に書いています。

何よりローソン選手もですが、巻き込まれたドライバー3人も無事で良かったです。怪我だけがほんと心配。それにシーズン真っ只中ですからね。あの牧野選手のマシンが飛んでひっくり返ってしまうシーンはかなり衝撃的でした。怖くなりました。

野尻選手は、ローソン選手と話して和解をしているそうです。当事者同士が直に話すのが一番大事ですし、チームメイトですからね。タイトル争いは2人も熾烈な訳で。まずは、ここは収まって良かったです。スマートな対応ですね、チームもね。最終戦の鈴鹿の戦いを楽しみにしています。

宮田莉朋選手ポイントリーダー

  • 37号車 宮田莉朋選手/VANTELIN TEAM TOM’S

モビリティリゾートもてぎは、不得手だという宮田選手。予選は8番手だったので、上位に食い込めなかったか、と正直思いました。

追い上げてくれるとは思っていても、野尻選手とローソン選手、予選1-3だから、抜き難いストップアンドゴーのもてぎと考えるとどうなんだろう?でも、これを立て直す力は…、今の宮田選手にはあるんですよね。

でも、本人が土曜日は少し投げやりな気持ちになっていました。とても現実的な発言の多い彼は(いや今の若手がそうなのかな~?)、現状、この状況だと無理だとか、結構みんな平気で言います。データや数字も大事ですから、それに基づいた発言で間違いではないでしょう。こちらもそんなネガティブな時はありますしね。

ただ、レースって何が起きるかわらないというのも根本にあります。もちろん物理的に無理なシチュエーションだってあると思いますが、ドラマチックなことをこれまでサーキットで散々目の当たりにして来たから、気の持ちようも大事だなとも思っていますよ。

予選後、本人は明るく振舞うも、気持ちが落ち込んでいる発言も多々あり、なかなか上向く感じでもなかったので、まずは頑張ってといういつものスタンスで話していました。苦手だと思っているところに先を越されたら凹みますよね。チームは彼の為に出来ることをすぐ考え始めていてもね。

  • 宮田莉朋選手/ VANTELIN TEAM TOM’S

決勝のレースが終わってからミックスゾーンで、「莉朋はすごいんだ」という話を本人にしました(笑)。一流のプロドライバーを相手に私はなんて失礼なんでしょうね。

でも本当に決勝の強さは、安定感しかないんですよ。かっこいいの。もともとの力が今季花開いた印象です。だからランキングトップでもある訳ですけどね。さすがに好結果には笑顔でほっとしました。

4位フィニッシュにより、ランキング2位のローソン選手に8ポイント、3位の野尻選手に10ポイントの差をつけました。ここはHondaさんのホームだし、逆転されちゃうかもと思っていましたが頑張りましたね。

最終ラウンドは、Hondaさんのホームで2レースというのがまた鬼門。最後も厳しい戦いが待っていると思いますが、思いっきりどーんと行って欲しいです。

とにかくね、若手の活躍が楽しみでしょうがないんです。妄想の流れで行けば、来季あたりハイパークラスに乗れなくても、きっとWECのどれかのカテゴリーに乗ってハイパークラスに乗る準備をするんだと思っています。山下選手や平川選手もそうだったから。ま、楽しみにしています!

小林可夢偉選手、初優勝を逃す

7号車 小林可夢偉選手/Kids com Team KCMG

前の週に夢だったNASCARに参戦したばかりで、絶賛ジェットラグと思われるアメリカ帰りの小林可夢偉選手。予選日朝のフリー走行から速さがあって、とても期待が持てました。

ここのところ、フリー走行中にほとんど走っていないということが連続していました。セットアップをやり直すこともあり、満足に走れていないまま予選を迎え、そして決勝、という困ったルーティンでした。

まずフリーを走ることが当たり前のことなんだけど、それが出来る、出来ないでこんなにも差が出るのかと。今回はしっかり予選にも備えることが出来ました。

予選も良かったけれど、決勝の走りも良かったですね。上位に食い込む為に早めのピットを選択、そこまで完璧だったんですよ。ペースを考えると、トップ争いにからめましたね。

なんかね、もうだいぶ前になりますが優勝をかけた戦いをピット作業のミスで落としたことを思い出しちゃって、その瞬間変な緊張感がうまれました。あれから体制を強化したはずですが、今季は見ていると毎戦細かなミスがあって少し心配な状況。

そして…、その大事な局面でやはりピット作業ミスにより、大きくポジションダウンを喫してしまったのです。絶句でした。

可夢偉選手も、憤りを隠せないのが無線でよくわかります。チームのアドバイザーで可夢偉選手の7号車を担当する田中哲也さんは、辛いのを堪えるしかなく、そして可夢偉選手に最後までレースをさせないといけないので、一生懸命無線を送り続けていました。

我慢して・・・と無線を送るのも辛かったと思います。レースが終わってからピットを訪れると、無言で田中マネージャーが腕組みをして座っていました。メカニックから事情を聴いているスタッフもおりました。

ドライバーは、松田次生監督と国本雄資選手が話していていつもの光景でしたが、まずは着替えるため、後ろに下がっていきました。クールダウン必要。ドライバーたちはすぐにメディア対応のミックスゾーンへ行く時間だったので、私もピットから離れてブリーフィングルームへ走りました。

可夢偉選手がやって来ると、もう言葉にならないくらいの絶望感が漂っていて、「次は無い」と…。「ピット作業のミス、あれが全て」。そう話してからしばし間がありました。

こちらも彼の心情を汲むと気の毒で、質問できないくらいの重い空気が漂っていました。ただ、こちらも仕事だから、辛いけどお話を伺い、可夢偉選手への取材は短めに終わりました。聞きたいこともあったけれど、憤りしかない「今」だったので…。

今季こそ優勝をしないと…という強い気持ちでシーズンを戦っているのもわかっていました。このミックスゾーンで“次の鈴鹿は最後だと思っている”と発言しているのも聞こえてきました。ドライバーだったら、怒って当然です。

これまで勝てそうなレースはいくつかありました。正直、こんな偉大なドライバーが未勝利というのも不思議でたまりません。最終戦の鈴鹿2ラウンドは注目したいと思います。彼の思いをしっかり繋いで欲しいです。普通にレースがしたい、とそこまで言っていました。ほんと、言葉の一つひとつが辛いです。自らスーパーフォーミュラのスポンサー営業までして頑張って来た彼ですからね…。

暑い中、お疲れさまでした! 最後はめちゃくちゃ複雑な想いでもてぎを去りました。では、また!

(写真:日本レースプロモーション、テキスト:大谷幸子)

MORIZO on the Road