シンデレラボーイ? ~ドライバー 佐々木雅弘インタビュー~

2007年からトヨタ自動車が参戦している、ドイツで開催されている「ニュルブルクリンク24時間耐久レース」。今年は、LC500のほかに、昨年10月のVLNに参戦し、ドライブしたモリゾウ選手から、ニュル合格のお墨付きをもらった「GRスープラ」が、晴れて本戦に参戦することとなりました。

写真左から、モリゾウ選手、佐々木雅弘選手、ウヴェ・クリーン選手、ヘルフィ・ダーネンス選手
写真左から、モリゾウ選手、佐々木雅弘選手、ウヴェ・クリーン選手、ヘルフィ・ダーネンス選手

SP8Tクラスに参戦する「GRスープラ」をドライブするのは、佐々木雅弘選手、ウヴェ・クリーン選手、ヘルフィ・ダーネンス選手、矢吹 久選手(社員ドライバー)との発表がありましたが、本戦では、レースウィークのサプライズ、モリゾウ選手が昨年のVLNに続き、ドライブすることが発表されました。

通常の流れのトヨタ自動車のプロジェクトで運営されるLC500のニュル参戦。それとは異なり、「GRスープラ」は、カスタマーモータースポーツを模索中のTMGが、クルマづくりを担当することに。カスタマーモータースポーツ、トヨタ自動車では、LEXUSの「RC F GT3」が活動中です(SUPER GT、SUPER耐久など)。

そして、今月の4日には、「GR Supra GT4」を2020年から販売することが発表されました。カスタマーモータースポーツ、GT3、GT4車両について説明を書いてみましたが、とても長くなったのでやっぱり割愛します…。調べてくださいませ。

さて本題。今年、ニュル参戦のドライバーラインナップに名前のあった佐々木雅弘選手。私は、SUPER GTに参戦した際に、名前を知りました。簡単に言うと、“草レース出身”のドライバーです。簡単過ぎますか。ですので、彼は、今回のニュルの参戦について、随所で「自分でいいんだろうか?と思った」という主旨の発言をしていますね。

“仕事”は、もちろん自分の努力もありますが、人と人との巡り合わせもかなり大きな要素であり、そこに存在することが重要だと私は思っています。今回の彼は、まさにそれのような気がします。草レース出身だろうが、サーキットで走ってそこに居なきゃ何も始まりません。そんな訳で、いきなり、トヨタ自動車のワークスドライバーとなった佐々木雅弘選手に、お話をちょっとだけ伺ってみました。

―――― まずニュルブルクリンク24時間レース、お疲れさまでした!

佐々木「安全にゴールが出来て一安心です。モリゾウ選手とみんなで協力して、スープラを無事にゴールまで運んで、しかも3位というオマケまで付いて安心しています」


―――― この参戦についてどんなカタチで進んだのでしょうか

佐々木「昨年、ニュルの準備をしておいてくださいと打診され、当初、何だろうと思っていました。そして、昨年の冬に正式にオファーがきました。しかし、どのクルマで走るのか、何も情報のない状態で契約にいたりました。まさか、こんな僕にチャンスがくるとは思っておらず、契約が終わってみたら、参戦車両はGRスープラということで、とても驚きました。ですので、気持ちは楽しみに変わりました。

このプロジェクトは、速く走れということではなく、クルマをしっかり鍛え、開発をしてクルマづくりにフィードバックをしなさい。ということだと自分なりに考え、仕事として引き受けることで、クルマづくりのお役に立てれば…と思っています」


―――― 今回もSUPER耐久(ルーキーレーシング)もですが、チームメイトにモリゾウさんがいらっしゃいますが、そばで見ていて感じたことは何かありますか?

佐々木「モリゾウさんは、ドライバー、メーカーの社長といろいろな顔をお持ちではありますが、クルマが本当に好きで、なおかつ、本気で良いクルマを作ろうという気持ちが行動に表れていると思います。

ご自身の運転スキルを上げることで、それをクルマにフィードバックし、世の中に良いクルマを出して行こうということを、しっかり考えていらっしゃいますね。速くなろう、安全に走ろうという努力がものすごいです。クルマに乗って降りたらすぐデータロガーのチェックや車載を見たりされるので、自分もレスポンス良く対応できるようにしています。

また、SUPER 耐久を共に戦っている方々は、企業の社長、パートナー企業の社長だったりしますが、みんながみんなモリゾウさんのファンだと感じます。社長だからというのではなく、人間的なところに惹かれるのであって、ファンなのでモリゾウさんを応援しています!という雰囲気が感じられて、とても良いと思います」


―――― 特別扱いしちゃわないの?

佐々木「普通のドライバーと何ら変わらずお仕事をされています。特別扱いをすると、クルマに関して本当のことが言えなくなりますので、ご一緒させていただく時は、ドライバーとしてチームメイトとして、やらせていただいています。

チームメイトとして、モリゾウさんが速く安全に走ることは、僕にもチームにも非常にプラスになります。あのニュルのコースを、自分たちのたった1分落ちで走ってくるということは、とんでもないことなんですよね。ニュルのコースは、僕たちよりも本当に良く知っていらっしゃると思います」


―――― すごい巡り合わせでしたね?

佐々木「今まで、自分がレース活動を続けてきた中で、小倉クラッチの小倉康宏社長にお世話になり、SUPER耐久に参戦するというお話しから、一緒にそのプロジェクトに参加させていただきました。その流れの中で、モリゾウさんがチームメイトという事態になりました。

また、ニュルの参戦もそうですが、当然思ってもみなかったことで、本当に自分で良いのかと思いました。日本中に、速く走るプロドライバーがたくさんいる中で、今回のタイミングで自分を選んでいただきました。クルマ開発に関して、目指すもの、自分で感じることは、ほかのプロにも負けていないと思っています。

この気持ちを、TOYOTA GAZOO Racingの活動にプラスになるような方向で頑張っていけたらと思っています。今年のニュルの挑戦は、完結したと思っています。あとは、SUPER耐久で頑張りますので、よろしくお願いします!」

ありがとうございました!トヨタ自動車の社員の方でも、なかなか近づけない方とのお仕事。つぶさにいろんな面を見られる環境は、うらやましいですね。興味本位ではなく、人として魅力を感じるということに関してですけどね。

また、佐々木選手は、プロドライバーとして、新しい路線からワークスドライバーになった、シンデレラボーイ。このタイミングでチャンスを掴んで、しっかり仕事をやってのけたこと、自信に繋がったと思います。今後のご活躍も期待しておりますよ!頑張ってくださいね!同郷のライターより!では、また!

(写真:トヨタ自動車 / テキスト:大谷幸子)

[ガズー編集部]

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