次世代型エコな乗り物「グリーンスローモビリティ」

昨今、よく耳にする「SDGs」。「持続可能な開発目標」ということで17の目標が掲げられています。その7番目「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」や、11番目の「住み続けられるまちづくりを」という目標にピッタリな乗り物が「グリーンスローモビリティ」です。

広島県福山市の「アサヒタクシー」では、このグリーンスローモビリティを活用して観光客向けのガイド付きタクシーを行なっています。

「潮待ちの港」で観光タクシーとして活用

創業72年目を迎える広島県福山市の「アサヒタクシー」は、ヤマハ製のグリーンスローモビリティ(以下、グリスロ)を使って、2019年4月より「グリスロ潮待ちタクシー」を鞆の浦で運行を開始しました。
なんでもグリスロをタクシーとして活用するのは全国初の試みだったそうです。

  • 鞆の浦

瀬戸内海の潮の分かれ目となる「鞆の浦」は、かつて潮の満ち引きを待つ船で栄えた歴史があり、「潮待ちの港」と呼ばれている景勝地。坂本龍馬の「いろは丸事件」の舞台にもなった場所です。

そんな鞆の浦は坂も多く、道が狭いこともあり、小回りがきくグリスロは重宝します。「渡船場」や「龍馬の隠れ部屋」、「常夜灯」などをめぐり、お手軽コースなら4人乗り30分貸し切りで2,800円。もちろん時間内であれば自分好みでコースのアレンジが可能です。

「地域の足」としても注目される新たなサービス

グリスロは、電気を動力として、時速20km未満で公道を走ることができるモビリティ。定員は5人(乗務員1人含む)です。

CO2の排出量が少なく、環境にもやさしいのが特徴。また小型でゆっくりとした走行なので小回りもきき、狭い道も走ることができるため、高齢化・過疎化が進む地方で「地域の足」として注目されています。

家庭用のコンセントで充電できるのも便利なポイントで、ガソリンスタンドが撤退してしまった地域でも運用することができる新しい交通手段です。

さらに、バスや通常のタクシー車両では走行が困難だった地域への送迎も可能。家に引きこもりがちになってしまうお年寄りの活動の幅を広げる一助となるため、今後さらに活用が期待される新たなサービスです。

  • バスが入りづらい場所でもラクラク走行

城下町をめぐるコースも登場

2020年3月末には、JR福山駅の北側にある「福山城(福山城公園)」を起点とする周辺エリアをめぐるコース「グリスロ城町タクシー」も開始。

福山城は、譜代大名・水野勝成によって1622年に築城され、「江戸時代建築最後のもっとも完成された名城」といわれていました。
残念ながら、国宝に指定されていた天守閣は空襲で消失しましたが、現在は復元され歴史博物館になっています。
伏見櫓や筋金御門は国の重要文化財となっており、来年(2022年)で築城400年を迎えます。

  • 福山城をバックにしたグリスロ

貸し切りで利用するならば、先ほどのような城の歴史は乗務員がしっかりとナビゲート! ガイドサービスもついているので、ゆっくりじっくりと鑑賞することができます。

運賃は、名城福山城をグリスロで巡る観光コース(1人1,000円、4人まで)と、定額(区域運行、フリー乗降)の1乗車1人200円の2種類あり、自分好みにアレンジできるのも旅の自由度を上げています。

ちなみに雨の日は、透明なシートを両サイドから下ろして運行しています。屋根にまくって取り付けられており、急な雨でもすぐに対応できるので安心です。

「SDGs」な時代にピッタリ!

開放感にあふれ、ゆったりゆっくり走るエコな乗り物「グリスロ」。小さな子ども連れや長時間の歩行が困難な人でも安心して利用できるところも魅力です。
観光需要のない時には、病院や買い物、寄合や地域活動へ向かう「地域の足」として活用されています。

地域の人も観光客もそれぞれの目的で活用できる次世代型モビリティ。今後、他の地域でも、このような移動手段がどんどん増えていくといいですね。

<取材協力>
アサヒタクシー

(取材・文:別役ちひろ/写真:アサヒタクシー/編集:奥村みよ+ノオト)

[ガズー編集部]

コラムトップ

MORIZO on the Road