【日本の自動車博物館】スバル360から幻のプロトタイプラリーカーまで。「スバルビジターセンター」はメーカー直系ゆえの濃さが魅力

「スバルビジターセンター」は、群馬県太田市にある株式会社SUBARU 群馬製作所 矢島工場の敷地内にある展示施設です。基本的には、矢島工場の見学者にスバルの歴代のクルマや技術、安全への取り組みを紹介する付帯施設のような位置付けですが、その内容はミュージアムと言って差し支えないほどの充実ぶりなのです。

戦後初の国産ジェット練習機T-1「初鷹」
戦後初の国産ジェット練習機T-1「初鷹」

建物の外には、富士重工時代に宇都宮製作所で製造された戦後初の国産ジェット練習機T-1「初鷹」が展示してあり、スバルの前身が「中島飛行機」であったことを思い起こされます。なお宇都宮製作所は、航空カンパニーの拠点のひとつとして、今もスバルの航空機の生産を担っています。

1階「展示ホール」

「スバルビジターセンター」は予約制のため、チケット売り場などの設備もなく、エントラントホールはこざっぱりとした印象。飛行機の羽をモチーフとしたオブジェと、水平対向エンジン+シンメトリカルAWDというスバルを象徴する技術が鎮座しています。さて、それでは1階の展示ホールを覗いてみましょう。

ビジターセンターのエントランスホール
ビジターセンターのエントランスホール

まず目に入るのは「All about SUBARU(スバルの系譜)」という展示ボード。あらためて眺めてみると個性的なクルマが多いことに気づかされます。

スバルの歴史が一目でわかる展示「All about SUBARU(スバルの系譜)」
スバルの歴史が一目でわかる展示「All about SUBARU(スバルの系譜)」

ちなみに展示台数は20台程度とさほど多くありませんが、国内で販売されなかったモデルや試作車、モーターショーに展示されていたコンセプトモデルなど、ここでしか見られないモデルも多く、それだけでも訪ねる価値は十分です。また、特筆すべきは、コレクションとして残ることが少ないベーシックグレードのモデルが展示されていることです。

初代レガシィツーリングワゴンの展示車のグレードが、比較的ベーシックなノンターボモデルの「Ti」だったりFFになって初めてのレックスが4ナンバーの「レックスコンビ」だったり、その時代のごく普通のグレードのクルマがきれいな状態で残っているのは、メーカーの展示ならではかもしれません。

まずはコレ、というわけでスバル360がお出迎え。なんと左ハンドルのコンバーチブルだ。奥に見えるのは初代サンバー
まずはコレ、というわけでスバル360がお出迎え。なんと左ハンドルのコンバーチブルだ。奥に見えるのは初代サンバー
初代レガシィツーリングワゴンはターボエンジン搭載のGTではなく1800ccのTi
初代レガシィツーリングワゴンはターボエンジン搭載のGTではなく1800ccのTi
レックスコンビは後期型
レックスコンビは後期型
富士重工製としては最後のサンバートラック&バン
富士重工製としては最後のサンバートラック&バン

このビジターセンターの展示の特徴のひとつは、大半のクルマが床に平置きしてあり、後方にも余裕があるため、クルマの周りをグルっと一周できること。実はこういう展示はあまり多くありません。好みのクルマを四方八方から観察することができます。

アメリカで企画されたスバル・ブラットは、後ろからも見たいクルマの筆頭。ちなみに日本では発売されなかったが生産は日本だ。後ろに見えるスバルff-1 1300G 4WDもとっても貴重な1台
アメリカで企画されたスバル・ブラットは、後ろからも見たいクルマの筆頭。ちなみに日本では発売されなかったが生産は日本だ。後ろに見えるスバルff-1 1300G 4WDもとっても貴重な1台

そのほか、モーターショーで披露されたコンセプトカーや、モータースポーツで活躍したクルマ、ラリーカーのプロトタイプなどを見ることもできます。

VIZIV2コンセプトは2014年にジュネーブショーでお披露目された、その名の通りコンセプトモデル
VIZIV2コンセプトは2014年にジュネーブショーでお披露目された、その名の通りコンセプトモデル
こちらは試作車 スバル1500(試作時呼称P-1)。奥は機械遺産に認定されたスバル360(K111型)
こちらは試作車 スバル1500(試作時呼称P-1)。奥は機械遺産に認定されたスバル360(K111型)
スバルのモータースポーツ活動については東京・三鷹のSTIギャラリーが充実してるが、こちらもなかなかの展示内容
スバルのモータースポーツ活動については東京・三鷹のSTIギャラリーが充実してるが、こちらもなかなかの展示内容
インプレッサWRC2009。この名前を聞いて「?」となった人はマニアかも。2008年の年末に突如WRCの撤退が発表され実戦投入されなかった2009年用のプロトタイプ。開発は進められていたのだ
インプレッサWRC2009。この名前を聞いて「?」となった人はマニアかも。2008年の年末に突如WRCの撤退が発表され実戦投入されなかった2009年用のプロトタイプ。開発は進められていたのだ

2階「安全技術ギャラリー」と「SUBARUギャラリー」

2階には「安全技術ギャラリー」と「SUBARUギャラリー」があります。「安全技術ギャラリー」ではカットモデルなどの展示と、EyeSightを始めとした最新のスバル車に採用されている安全技術を見ることができます。「SUBARUギャラリー」では、より深くスバルの歴史がわかる貴重な展示物が多く、中でもスバル360のデザイン設計のための石膏原寸モデルや、ずらりと並んだエンジンは必見です。

2階の「安全技術ギャラリー」
2階の「安全技術ギャラリー」
「SUBARUギャラリー」に並べられた数々のエンジン。もちろんその大半が水平対向エンジンです
「SUBARUギャラリー」に並べられた数々のエンジン。もちろんその大半が水平対向エンジンです
レガシイ用水平対向4気筒ディーゼルエンジン
レガシイ用水平対向4気筒ディーゼルエンジン
スバル360の貴重な石膏原寸モデル
スバル360の貴重な石膏原寸モデル

大きな施設ではありませんが、スバルの歴史を学べると同時に、貴重なクルマを見られる“濃さ”が魅力の「スバルビジターセンター」。スバルファンならずとも、工場見学とともに一度、訪れてみる価値はあるでしょう。

なお「スバルビジターセンター」は、工場内に建てられた見学用の付帯施設のため、オリジナルグッズやお土産物の販売はありません。それでも、どうしてもここに来た証が欲しい方には太田駅(東武鉄道)そばの和菓子店「伊勢屋」がおすすめです。スバルファンの間では有名なスバル最中のほか、さまざまなスバル関連のお菓子が用意されています。イートインスペースもありますのでここで見学の余韻に浸るのもいいかもしれません。

太田駅そばの和菓子店「伊勢屋」
太田駅そばの和菓子店「伊勢屋」

(取材・文・写真:高橋学 編集:木谷宗義+ノオト)

▼株式会社SUBARU スバルビジターセンター
住所:群馬県太田市庄屋町1-1
電話:0276-48-3101
Webサイト:https://www.subaru.co.jp/csr/factory-tour/
※一般の申し込みの場合、上記電話番号に連絡のうえ見学手続きが必要です。

[ガズー編集部]

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