【試乗記】スズキ・スイフトRSt(FF/6AT)

【試乗記】スズキ・スイフトRSt(FF/6AT)

■軽さと豊かさの両立

スズキ・スイフトRSt(FF/6AT)
1リッター直3ターボエンジンを搭載する、新型「スズキ・スイフト」の最上級モデル「RSt」に試乗した。新しいプラットフォーム「ハーテクト」を得てかろやかさに磨きがかかった新型は、同時に従来のスズキとはちょっと違う“豊かさ”をも手にしていた。

■ユーロなスイフト

バッジは「RS」だがグレード名は「RSt」。RSを名乗るスイフトはこのほか、標準型「RS」と「ハイブリッドRS」がある。
バッジは「RS」だがグレード名は「RSt」。RSを名乗るスイフトはこのほか、標準型「RS」と「ハイブリッドRS」がある。
1リッター直3ターボ“ブースタージェット”エンジンは102psと15.3kgmを発生。
1リッター直3ターボ“ブースタージェット”エンジンは102psと15.3kgmを発生。
リアドアハンドルをCピラーガーニッシュに配置し、クーペ的な視覚効果を狙っている。
リアドアハンドルをCピラーガーニッシュに配置し、クーペ的な視覚効果を狙っている。
「RS」シリーズには、リアバンパーの中央にリアフォグランプが標準で備わる。
「RS」シリーズには、リアバンパーの中央にリアフォグランプが標準で備わる。
スイフトの最高性能モデルが、RStである。新型にはほかにも“RS”を冠したグレードがあるが、タダの「RS」や「ハイブリッドRS」のエンジンは、1.2リッター4気筒。RStだけは1リッター3気筒ターボを積む。1.5リッター並みの出力/トルクを実現したという「バレーノ」初出のダウンサイジングターボユニットである。170万4240円の価格は、2WDスイフトでいちばん高い。

新型の売りでもあるRSシリーズに共通して言えるのは、シャシーが「欧州チューニング」であること。2016年1月から試験車を持ち込み、欧州各国でテストを重ねたという。スイフトは、2004年登場の先々代モデルからハンガリーでの現地生産を始め、欧州市場に深く関わってきた。代を重ねた新型は、最初から“ユーロなスイフト”を前面に押し出している。

新しい5ドアボディーも、欧州コンパクトのデザインテイストてんこ盛りという感じだ。どうやったって2ドアクーペには見えないフォルムなのに、リアドアのレバーは縦置きにして高い位置に隠してある。これは正直、使いにくいだけだった。

RSシリーズは、ボディーカラーにかかわらず、フロントグリルに赤い水平ラインが入る。でも、これがせっかくの六角形グリルを二分してしまい、ファニーなおサカナ顔に見える。プレーンなブラックグリルのほうがすっきりカッコイイと思う。

バッジは「RS」だがグレード名は「RSt」。RSを名乗るスイフトはこのほか、標準型「RS」と「ハイブリッドRS」がある。
バッジは「RS」だがグレード名は「RSt」。RSを名乗るスイフトはこのほか、標準型「RS」と「ハイブリッドRS」がある。
1リッター直3ターボ“ブースタージェット”エンジンは102psと15.3kgmを発生。
1リッター直3ターボ“ブースタージェット”エンジンは102psと15.3kgmを発生。
リアドアハンドルをCピラーガーニッシュに配置し、クーペ的な視覚効果を狙っている。
リアドアハンドルをCピラーガーニッシュに配置し、クーペ的な視覚効果を狙っている。
「RS」シリーズには、リアバンパーの中央にリアフォグランプが標準で備わる。
「RS」シリーズには、リアバンパーの中央にリアフォグランプが標準で備わる。

■静かでかろやかな直3ユニット

1リッター直3ターボエンジンは静かで洗練されている。同じエンジンを搭載する「バレーノ」より質感が高い。
1リッター直3ターボエンジンは静かで洗練されている。同じエンジンを搭載する「バレーノ」より質感が高い。
インパネのデザインテーマはスポーティーさと操作性の両立。センターパネルは運転席側に5度傾けられている。
インパネのデザインテーマはスポーティーさと操作性の両立。センターパネルは運転席側に5度傾けられている。
タコメーター(左)のレッドゾーンは6300rpmから。スピードメーター(右)には220km/hまで刻まれる。
タコメーター(左)のレッドゾーンは6300rpmから。スピードメーター(右)には220km/hまで刻まれる。
試乗車のボディーカラーは新色のスピーディーブルーメタリック。
試乗車のボディーカラーは新色のスピーディーブルーメタリック。
バレーノと同じ996cc 3気筒ターボといっても、チューンは細かく違う。RStはパワー(102ps)もトルク(15.3kgm)も少し控えめ。そのかわり、無鉛レギュラー仕様に変わっている。

スペック以上に違うのはエンジンの品質感で、バレーノよりも静かで洗練されている。バレーノはザワザワした3気筒ビートがもっと顕著で、それはそれで牧歌的でイイのだが、RStはふつうに使っているとほとんど3気筒とはわからない。

変速機はシフトパドル付きの6段AT。このエンジン、ぜひMTで味わいたいものだと思っていたが、スイフトでも3ペダルは用意されなかった。とはいえ、ATとの相性はいい。

スタートダッシュにはとてもリッターカーとは思えない力強さがある。MTモードで引っ張ると、5500rpmあたりでシフトアップする。高回転で張りついたままになるCVTに慣らされていると、ATはやはりメリハリがあっていいなあと思う。とくに回りたがりのエンジンではないが、4000rpmあたりからは3気筒らしいかろやかなビートと音が漏れる。高級感はないが、エンジンらしさにあふれていて、とても楽しい。

RStは、新型スイフトのなかで唯一、エコカー減税を受けていない。カタログで一覧すると、ひとりだけ落第しているみたいでかわいそうだが、現実燃費は悪くなかった。今回、約360kmを走り、満タン法で16.3km/リッターを記録する。

1リッター直3ターボエンジンは静かで洗練されている。同じエンジンを搭載する「バレーノ」より質感が高い。
1リッター直3ターボエンジンは静かで洗練されている。同じエンジンを搭載する「バレーノ」より質感が高い。
インパネのデザインテーマはスポーティーさと操作性の両立。センターパネルは運転席側に5度傾けられている。
インパネのデザインテーマはスポーティーさと操作性の両立。センターパネルは運転席側に5度傾けられている。
タコメーター(左)のレッドゾーンは6300rpmから。スピードメーター(右)には220km/hまで刻まれる。
タコメーター(左)のレッドゾーンは6300rpmから。スピードメーター(右)には220km/hまで刻まれる。
試乗車のボディーカラーは新色のスピーディーブルーメタリック。
試乗車のボディーカラーは新色のスピーディーブルーメタリック。

■ワインディングロードは大好物

「RS」シリーズには“欧州チューニング”の足まわりが与えられる。フラットな乗り心地と高い直進安定性の実現を目指している。
「RS」シリーズには“欧州チューニング”の足まわりが与えられる。フラットな乗り心地と高い直進安定性の実現を目指している。
タイヤサイズは前後とも185/55R16。
タイヤサイズは前後とも185/55R16。
「RS」シリーズにはLEDヘッドランプが標準で装着される。
「RS」シリーズにはLEDヘッドランプが標準で装着される。
テールランプとストップランプもLEDとなる。
テールランプとストップランプもLEDとなる。
足まわりは、かなり締め上げられている。というか、走り出した途端、なによりまず印象的だったのは、アシの硬さだった。ボディー剛性も高い。わかりやすく言うと、ボディーとシャシーは、ドイツ車っぽい。

燃料タンク容量は旧型より最大で5リッター小さくなり、全車37リッターである。そうした部品単位での細かな軽量化や、新プラットフォームの採用で、新型は同グレード比で最大120kgも軽くなった。全モデルが1tをきり、最もパワフルなRStも、930kgしかない。しかし乗っていると、チャチな軽さはまったくない。

硬いサスペンションは、40km/h以下の低速域だと突き上げがやや気になるが、スピードを上げて、入力が大きくなればなるほどしなやかさが出てくる。そこがこれまでのスイフトとは違う。

ステアリング系の剛性は高く、しかもインフォーマティブで、路面感覚をよく伝える。こうした足腰に、活発な3気筒ターボが組み合わされる。ワインディングロードは大好物だ。ベストハンドリングスズキだと思う。

「RS」シリーズには“欧州チューニング”の足まわりが与えられる。フラットな乗り心地と高い直進安定性の実現を目指している。
「RS」シリーズには“欧州チューニング”の足まわりが与えられる。フラットな乗り心地と高い直進安定性の実現を目指している。
タイヤサイズは前後とも185/55R16。
タイヤサイズは前後とも185/55R16。
「RS」シリーズにはLEDヘッドランプが標準で装着される。
「RS」シリーズにはLEDヘッドランプが標準で装着される。
テールランプとストップランプもLEDとなる。
テールランプとストップランプもLEDとなる。

■改良を期待する

前席は座面も背もたれも大きく、厚い。ホールド性と快適性がほどよく両立している。
前席は座面も背もたれも大きく、厚い。ホールド性と快適性がほどよく両立している。
ホイールベースは従来より20mm長い2450mm。前後の乗員間距離は10mm広げられている。
ホイールベースは従来より20mm長い2450mm。前後の乗員間距離は10mm広げられている。
スズキ初となる、単眼カメラとレーザーレーダーを併用した衝突被害軽減システムが備わる。
スズキ初となる、単眼カメラとレーザーレーダーを併用した衝突被害軽減システムが備わる。
荷室容量は先代型より55リッター多い265リッター。後席を倒せば最大で579リッターまで広げられる。
荷室容量は先代型より55リッター多い265リッター。後席を倒せば最大で579リッターまで広げられる。
ドイツ車っぽいといえば、運転席シートもそうだった。座面も背もたれも、たっぷりと大きく、厚い。座り心地はパリッと硬めで、とくにスポーツシート的形状をしているわけではないが、ホールド性と快適性がほどよく両立している。

そんな性能、日本で使わないでしょ、とばかり、徹底してオーバークオリティーを許さないような“見切り”が、スズキイズムの根幹にあるような気がしていたが、こんどのスイフトは違う。といっても、まだRStとハイブリッドRSにしか乗ったことがないが、少なくともこの2台にはかつてない“豊かさ”を感じた。

今回のRStでひとつ気になったこと。オプションの「セーフティパッケージ」に含まれる自動ブレーキが、一度、誤作動した。

上り坂の峠道を走行中、同じ車線の前後にクルマはいなかったが、対向車が近づいていた。凍結が心配される北斜面だったので、どちらもスピードは出ていない。つまり、なんらブレーキを踏む必要はないのに、突然、ガガガっと大きな音がして、1~2秒間、急制動がかかった。人頭大の落石に乗り上げたのかと思った。これまでさまざまな自動ブレーキ装着車に試乗したが、こんなことは初めてである。車線逸脱警報も、何度か意味不明のところで鳴ることがあった。

自動ブレーキも、車線逸脱警報も、エンジンをかけるとデフォルトでオンになるが、スイッチを長押しすれば、キャンセルできる。でも、乗るたびにカットしたくなる安全装置では意味がない。改良を期待したい。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=小河原認/編集=竹下元太郎)

前席は座面も背もたれも大きく、厚い。ホールド性と快適性がほどよく両立している。
前席は座面も背もたれも大きく、厚い。ホールド性と快適性がほどよく両立している。
ホイールベースは従来より20mm長い2450mm。前後の乗員間距離は10mm広げられている。
ホイールベースは従来より20mm長い2450mm。前後の乗員間距離は10mm広げられている。
スズキ初となる、単眼カメラとレーザーレーダーを併用した衝突被害軽減システムが備わる。
スズキ初となる、単眼カメラとレーザーレーダーを併用した衝突被害軽減システムが備わる。
荷室容量は先代型より55リッター多い265リッター。後席を倒せば最大で579リッターまで広げられる。
荷室容量は先代型より55リッター多い265リッター。後席を倒せば最大で579リッターまで広げられる。

■テスト車のデータ

スズキ・スイフトRSt
スズキ・スイフトRSt
スズキ・スイフトRSt セーフティパッケージ装着車

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3840×1695×1500mm
ホイールベース:2450mm
車重:930kg
駆動方式:FF
エンジン:1リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:6AT
最高出力:102ps(75kW)/5500rpm
最大トルク:15.3kgm(150Nm)/1700-4500rpm
タイヤ:(前)185/55R16 83V/(後)185/55R16 83V(ブリヂストン・エコピアEP150)
燃費:20.0km/リッター(JC08モード)
価格:180万0360円/テスト車=198万4878円
オプション装備:全方位モニター付きメモリーナビゲーション(14万2560円) ※以下、販売店オプション フロアマット(2万0142円)/ETC(2万1816円)

テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:2170km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(5)/山岳路(2)
テスト距離:358.7km
使用燃料:22.0リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:16.3km/リッター(満タン法)/16.9km/リッター(車載燃費計計測値)


スズキ・スイフトRSt
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