【日産 スカイライン 新型試乗】欲深く、利己的な人には向いていない「プロパイロット2.0」…岩貞るみこ

「プロパイロット2.0」でハンズオフ走行を試してみた
『スカイライン』の黄金時代を知るバブル世代としては、このクルマのデザインやサイズ感に1mmも心が動かないことはさておき、「プロパイロット2.0」である。

先にお断りしておくけれどプロパイロット2.0は自動運転ではなく、いわゆるレベル2の運転支援技術。常にドライバーによる周囲監視が必要で、手を離していい状態であったとしても、なにかあったらすぐにドライバーがハンドルを持って対応する義務がある。もちろん、事故ったらドライバー責任なのでお忘れなく!


◆期待が膨らまないわけがない「ハンズオフ」

基本的な操作は、ハンドル上にあるプロパイロットスイッチを押し、セットスイッチを入れることでモードに入る。このまま高速道路で条件がそろえば、まず、ハンズオンで車線内に維持するよう支援が開始し、さらに条件が整うと、ハンズオフ走行が可能という仕組みだ。

なんたって「やっちゃえ日産」である。ハンズオフでどのくらい実力を発揮してくれるのか、標識の制限速度を読み取り、速度を調整し、車線変更もしてくれるとあらば、期待が膨らまないわけがない。

今回は、日産本社から首都高速湾岸線~横浜横須賀道路を南下というルートである。首都高速は、都心部の交通量や分岐の多い一部はプロパイロット2.0が機能しないよう制限されているものの、湾岸線のような直線的なところは機能する。しばらく走っていると条件がそろったらしく、インパネの表示が青になり、ハンズオフが開始された。


◆まわりがよく見えるようになる

ハンズオフの感想は、率直に言って楽! 

周囲の監視義務があるとはいえ、システムが運転してくれている安心感があり、視界が広くなった感じすらする。まわりがよく見えるのだ。

ただ、私がこうして心穏やかに乗っていられるのは、三車線ある一番左側を、ゆるーく走っているから。ためしに中央車線に行くと、ゆっくり落ち着いてはいられない。右から左から、いつクルマが目の前に来るかと、前方視界や左右&ルームミラーを見ながら緊張感がぐっと高まる。

左側の車線にいても、ICやサービスエリアから本線上に合流してくるクルマはあるのだが、合流部分にくるたびに毎回、ポーンという警告音とともに、注意喚起してくれる。ハンズオフしていると前方にのみ注意がいきがちなので、この警告音&メッセージは、かなりいい仕事をしているとしみじみ思う。


◆制限速度きっちりの減速は胃がめくれそう…

料金所が近づくと、道路標識の制限速度を読み取ってどんどん減速をはじめる。横浜横須賀道路を終点までいくと本線がそのまま料金所になるため、減速しすぎじゃないの? と、胃がめくれそうになるほど減速する。減速Gはさほど強くはないのだが、いかんせん、時速60km、時速40kmと徐々に変わる速度制限に対してきちんと従うので、周囲との速度差が大きいのだ。

いえ、遵法意識が高い私、時速40km制限とか、ETCレーンは時速20km以下で、という指示をこれまでもきちんと守ってきましたよ。でもね、私の減速具合よりも、かなり早めに減速を完了しちゃうので、時速40kmで走る時間が長いのだ。これ、追突されちゃわない? 夜とか特にやばいでしょ? と、ルームミラーで後ろを見ながらびびりまくりである。

さらに、料金所手前になると、インパネが真っ赤になって、「操作してください」としつこいくらいに訴えてくる。ハンドルは、触れると感知するセンサーが入っているのだが、どうも私の手は感知されにくいのか(スマホにもよく無視される)、「わかったってば!」と言いたいくらい警告してくれる。厳しい警告は安全のためなので、ありがたいっちゃありがたいのだけれど。


◆車線変更支援には悶絶

続いて、車線変更支援。これがまた使いにくい。というのも、ハンズオフで走っているときに前方に遅いクルマがいたら、車線変更しませんかと促してくれるのだが(変更したい車線に他の車両がいないことを確認してくれる)、車線変更支援スイッチを押すと、ウィンカーが作動して車線変更の完了までを自動でやってくれるのだが、追い越すクルマとの速度差が小さいため、なかなか追い越せないのだ。

いらっとする。追い越し車線を後方からせまってくるクルマにあせってしまう。とっととアクセル踏んでぱっと追い越しちゃいたい! と悶絶してしまう。

しかも、車線変更のときはハンドルに手を添えなければならず、うっかりハンズオフのままでいようものなら、すかさず「解除します」とインパネが真っ赤になって、いろんなものが解除されてしまう。きーっ、そっちの方があわてるわ!


◆運転支援してくれて、ありがとうと感謝の気持ちを

プロパイロット2.0。これ、使えるのか、使えないのか、なんともびみょーな気分である。

とはいえ、ハンズオフに入った時の、あの視界が広くなった清々しさは否定できない。心にゆとりができて、「ぼくがついているよ」と、さりげなく運転を担ってくれる頼もしさも感じていた。さらに、制限速度の標識や、カーナビ設定でカーブを認知したら、勝手にシフトダウンして速度を落としてくれるときの、3.5リットル、V型6気筒エンジンの懐の深さとしなやかさにもうっとりだ(ハイブリッドなのに燃費が悪いことはともかくとして)。

運転支援してくれて、ありがとう。
ちょっと楽にしてくれて、ありがとう。

そんなふうに、感謝の気持ちを持って安全に使いこなせる人にこそ、プロパイロット2.0の技術は効果を発揮する。そう、なんでもかんでも期待して、おらおら、やってくれるんでしょ的な、欲深く、利己的な人には向いていない。この技術、心して乗っていただきたい。


■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、ノンフィクション作家として子どもたちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。

(レスポンス 岩貞るみこ)

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