フィアット初の電気自動車 チンクエチェントeの魅力を「フィアット500」マニア嶋田智之が語ります
今回ピックアップするのは、名車「500(チンクエチェント)」の名を受け継ぐフィアットの量産型電気自動車(BEV)「500e」。その特徴について、自他ともに認める“500マニア”嶋田智之が語る。
あれは忘れもしない、2020年の3月初旬のこと。僕は公開されたばかりのBEV版フィアット500の写真を見て、ちょっとした感動に浸っていた。なぜならば、そのスタイリングから「ああ、2000年代初頭にやったのと同じことをしていて、ブレがないな」と思えたからだ。
フィアットが2000年代初頭にやったこと。それは、2007年にデビューした3代目500をつくり上げるために、1957年から1977年まで400万台以上が販売された希代の名車、2代目500の持つキャラクターや世界観を根本的なところから解釈し直し、時代にマッチした新世代のフィアット500像を入念に創造したことだ。
2代目500こと正式名称「ヌォーヴァ500」は、それまでスクーターをアシにするしかなかった裕福ではない人たちにも手が届く価格で提供され、クルマで走る楽しさや自由に移動できる喜び、誰かと一緒に遠くまで行けるうれしさ、重い荷物も運べる便利さ、自分だけの空間……と、実にさまざまな宝物をたくさんのイタリア人に贈った国民車的存在。見ている方が思わずニコやかな気持ちにさせられちゃうような愛らしいルックスと、遅いけれど意外やスポーティーなハンドリングもあって、“500”のイタリア語読みの「チンクエチェント」として世界中で親しまれてきたことは皆さんもご承知のとおりだ。
2007年にデビューした3代目のチンクエチェントは、物質的には豊かな時代であったがゆえに、実用車というより暮らしを楽しく彩るスペシャルティー・コンパクトカーとして誕生し、今もまだ世界中の人たちの心を満たし続けている。
そして上陸したばかりの日本ではフィアット500eと呼ばれるBEV版チンクエチェントはどうかといえば、現行のエンジン版チンクエチェントをベースにチャッチャと電動化したモデルではなく、ゼロからの新設計にして新デザイン。つまり、これから先の近未来にフィットするよう真剣につくられた、全く新しいチンクエチェント、というわけなのだ。それだけに乗る前から期待感が膨らみまくってしまうのは、言うまでもないだろう。
(文:自動車ライター・嶋田智之)
[GAZOO編集部]
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